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『スケバン美玲』 第2話

【本文】
○走る車・車内

高速道路を走る富永と美玲の車。
看板には『山尾』の文字。
富永、美玲を見て

富永「準備はいいか?」
美玲「はいよ」
富永「里子のもの盗むなよ」
美玲「当たり前だ。あんたみたいな悪党じゃないんだ!」
富永「金盗んだろうに……」


○山尾銀行・表

黒いハイエース。
田宮たちを乗せた車が停車する。
田宮、里子、川上が降りる。
顔が見えないように、深々とフードを被っている。

田宮「行くぞ」

田宮と川上、店内へ入る。
里子は表で見張りをしている。


○同・店内
時計の針は14時50分を指している。
閉店前で慌ただしい店内。
深々とフードを被りながら、客を装う田宮と川上。


○同・表
店の前に立つ里子。
美玲が里子の前を通り過ぎる。
里子の前で、ポケットからヨーヨーを落とす。
美玲、角を曲がり裏通りへ入っていく。
里子、ヨーヨーを拾って美玲を追いかける。

里子「ちょっとあんた、落としたぞ」

里子、角を曲がる。
富永、背後から里子の口を塞ぐ。
路地裏に連れていく。


○路地裏
富永、里子に話す。

富永「里子、俺だ、兄ちゃんだ」
里子「え、お兄ちゃん?」
富永「お前を助けにきた」
美玲「ヨーヨー、返しておくんなまし。あたいの大事なやつなんじゃ」
里子「おくんなまし?」
富永「こいつは美玲。里子にすり替わってくれる」
里子「え、大丈夫?てか訛りすごくない?」


○表通り
白いセダン。
銀行から少し離れたところに、塚田と新田川の車が停車する。


○塚田と新田川の車・車内
車から銀行を見る塚田。

塚田「やつら、この中のはずです!」
新田川「よし、手分けするぞ。俺はここで見張ってる」
塚田「うっす!」

店内へ入る塚田。


○富永の車・車内
路地裏前に停まっている。
互いの衣服に着替えた里子と美玲。

富永「美玲、絶対に喋るなよ」
美玲「はいよ」
富永「裏口から逃げたら、ここに行ってくれ」

メモ書きを渡す富永。

富永「駅のロッカーだ。明日になっても取りに来なかったら俺が助けを呼ぶ。いいな」
美玲「ふん、強盗で死んでたまるかい」
富永「俺と里子は豊海港から船で国外へ出る」
美玲「お好きにしておくんなまし」

美玲、ヨーヨーを握りしめる。

美玲「じゃ、そろそろあてえは行くよ」

美玲、車を出て銀行前へ向かう。
里子、神妙な面持ちで

里子「……私、奴らとここに残る」
富永「なんで?」
里子「……今から社会に出たって……私中卒だよ?」
富永「どうにでもなるさ!」
里子「もとはと言えばお兄ちゃんのせいだよ!」
富永「……」
里子「なんで出てったの?ずっと一人だったんだよ?お母さんも死んじゃって……」
富永「……悪かった」

涙を拭う里子。

富永「家族で稼げるのは俺しかいなかったから……」
里子「だからって……」
富永「実は母さんから預かってるものがあるんだ」

DVDを取り出す富永。

富永「母さんからのメッセージだ」
里子「え、お母さんから……?」
富永「20歳の誕生日に見せてくれって」
里子「……」
富永「一足早いが、見てほしいんだ」

富永、DVDプレーヤーで再生する。
すると画面には、水着美女の映像が。
大きなダーツと熱湯風呂でゲームをしている。
楽しそうな水着美女。
呆然とする富永と里子。

里子「……熱湯風呂?」

ハッとする富永。

富永「……美玲のやつ!ふざけるな!」

DVDを二つに割る富永。
車を出て、銀行に向かう。


○山尾銀行・店内
時計の針が15時を指している。
表のシャッターが降り始める。
田宮と川上、銀行員たちに背を向け、フードをあげ覆面をかぶる。


○同・表
走って中へ入る富永。
警備員の制止を振り切る。


○同・店内
美玲、フードをあげ覆面をかぶる。
富永が店内に入ってくるのを、見つける美玲。
田宮と川上、銃を銀行員たちに突きつける。
田宮、大声で言う。

田宮「全員ひざをつけ!両手を頭の後ろに!」

銀行員たちが悲鳴をあげる。
騒然とする店内。
富永、受付カウンターの下に隠れる。
奥には塚田も隠れている。

田宮「騒ぐなよ。安心しな。銀行の金を盗むだけだ。金庫の鍵をよこしな!」

支店長、震えながら田宮に金庫の鍵を渡す。
金庫へ向かおうとする田宮。
すると富永の携帯から、着信音が鳴る。
ざわつく店内。
急いでミュートにする富永。

田宮「おい、誰だ!隠れてるのか?」

田宮の声で張り詰めた空気になる店内。
田宮、川上に合図を出す。
川上、受付カウンターへ向かおうとする。
美玲、慌てて川上の肩を叩く。
ジェスチャーで『自分が行く』と合図する。
銀行員たちの視線が美玲に集まる。
美玲、受付カウンターの下へ行く。
富永と目が合う。
美玲、OKのサインを田宮に出す。

田宮「なんだ、気のせいか?よし、里子行くぞ。川上はここに残れ」

美玲、田宮にジェスチャーで合図を送る。
自分を指差し、次に床を指差す。
『ここに残る』と合図。

田宮「あ?喋れよ、里子」

必死に自分を指差し、床を指差す美玲。
トランシーバーから『あと10分、急げ!』と三浦の声。
川上の背中を押す美玲。

田宮「早く来い、里子!」
美玲「あ、わた……し、こ、ここにいる……」

息を呑む富永。

田宮「ん?誰の真似だよ。ふざけてないで行くぞ」

美玲、勢いよく川上の背中を押す。
その拍子でポケットからヨーヨーが落ちる。
田宮、ヨーヨーを見て

田宮「ヨーヨー?里子こんなの持ってたか?」
川上「いや持ってないぞ」

田宮、美玲の前に行く。
田宮「お前、誰だ?本当に里子か?」
川上「なんだ、このおもちゃ」

笑いながらヨーヨーを蹴飛ばす川上。
それを見て声を荒げる美玲。

美玲「触んないでおくんなまし!」

驚いた様子の田宮と川上。

田宮「おくんなまし……?」
川上「だ、だれ?」
美玲「おまんら、許さんぜよ!あてえのヨーヨーじゃ!」

苦笑いする田宮と川上。

田宮「おい、おい。里子、スケバン刑事になったのかよ」

美玲の覆面を奪い取る田宮。
必死に抵抗する美玲。
それを見て川上、

川上「おい、おとなしくしろ!」

川上、美玲に銃を向ける。
銀行員たちの悲鳴が店内に響く。
それを見た富永が、

富永「やめろ!」

立ち上がって言う。

川上「あ?誰だ?」
田宮「やっぱり隠れてやがったか!」

川上、銃を富永に向け、発砲しようとする。
『キャー!』と銀行員たちの悲鳴。
美玲、瞬時に川上へ飛び蹴り。
後頭部を蹴る。
見えないくらいの速さ。
失神する川上。
着地する美玲。
カンフーのポーズを取る。

美玲「烈派総師範、江美玲を舐めたらあかんぜよ!」


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