『ファイティング・シンデレラ』 第2話
【本文】
◯神社・参道(夜)
夜も更け、人もまばらになっている。
文子、早織、新田が歩きながら話している。
早織「いやー楽しかった」
新田「ね。アクシデントはあったけど、それはそれで」
顔を赤くする文子。
早織「文子も紘一郎と仲良くなったみたいで良かった」
新田「また遊びたいね」
文子「う、うん。また」
早織「文子も夏祭り好きになった?」
早織、笑みを浮かべ言う。
文子「もちろん。もとから好きだよ!」
早織「なら良かった」
◯駅・改札前(夜)
文子が早織と新田に言う。
文子「私、こっちだから」
早織「はーい、またね」
新田「じゃあ、また。学校で」
改札を入る文子。
◯電車・車内(夜)
文子、座席に座っている。
怜子がつけたUFOの刺繍を見つめ、笑みを浮かべる。
小声でつぶやく。
文子「UFOのおかげ」
◯ニュードリーム・104号室(夜)
パジャマ姿で髪を乾かす文子。
冷蔵庫を開ける。
文子「あちゃー。空っぽ……」
財布と鍵を手に取り、玄関を開ける。
廊下から早織らしき声が聞こえる。
扉を少し開けたまま、聞き耳を立てる文子。
◯同・廊下(夜)
早織と新田が歩いている。
早織「ねえ、なんでこんなオンボロなのよ」
新田「どこもいっぱいだったろ」
早織「盛り下がるわー」
新田「祭りの続き楽しもうよ」
早織「てか今日マジつまんなかった」
新田「いやおんぶしただけだろ」
早織「ふふ。完全に惚れてやんの。文子のやつ」
新田「まあ処女っぽいもんなあ」
早織「それガチ」
笑う早織。
104号室の前を通る。
◯同・104号室(夜)
扉を少し開け、立っている文子。
扉の隙間から、赤い花柄の巾着を持った早織が通る。
隣の105号室に入る音が聞こえる。
ドアノブを持ったまま、身震いする文子。
床に涙が落ちる。
◯同・105号室(夜)
早織が新田に話しかける。
早織「ねえ、これタオルとか本当きれい?触るの怖いんだけど」
笑って言う早織。
新田「そんないちゃもんつけるなよ」
新田、早織に抱きつく。
部屋の明かりが暗くなる。
新田、ポケットに何か入っていることに気づく。
中にはUFOのお守り。
新田「あ、これ拾ったのそのままだったわ」
早織「捨てれば?」
ベッドの横に置く新田。
◯同・104号室(夜)
ベッドにうずくまる文子。
涙が止まらない。
うっすらと隣の部屋から喘ぎ声が聞こえる。
◯アダムスハウス・外観(夜)
土砂降りの雨。
雷が鳴っている。
木々が風で揺れている。
◯同・3階・廊下(夜)
ドシンと揺れる建物。
転びそうになるラウドとレイス。
あたりは暗くなり、不気味なオブジェが立ち並ぶ。
悪魔も次第に増えていく。
巨大化し凶暴化している。
ラウドとレイスに襲いかかる。
レイス「ちょっとまずいね。これ使いな!」
レイス、ラウドにナイフを渡す。
ラウド「一体どうなってんだよ!」
次々に悪魔を切り裂いていくレイス。
ラウドの後ろから悪魔が襲いかかる。
ラウド「うわああ!」
必死にナイフで斬りつけるラウド。
レイス「急ぐよ」
必死にレイスの後を追うラウド。
しかし悪魔に足を掴まれて転んでしまう。
悪魔「ぎおぐーぎおぐぎおぐ!」
ラウド「離せよ、くそ!」
ラウド、悪魔の手を切り裂く。
レイス「一気にハードモードになったね」
ラウドの掴まれた足に、火傷のあとのような手形がついている。
ラウド「くそ痛えな、くそが!」
レイス「この部屋の一番奥よ」
ラウド「さっさと殺そうぜ」
悪魔を次々に切り裂くラウド。
レイス「手慣れてきたね」
走るラウドとレイス。
◯ニュードリーム・廊下(朝)
清掃をする怜子。
日比野に話しかける。
怜子「今日ふみちゃんはいないんです?」
日比野「あれ、休むって聞いてないけどね」
怜子「まだ寝てるのかしら」
日比野「珍しいねえ」
◯同・104号室(朝)
呆然と頭からシャワー浴び続ける文子。
◯同・廊下(朝)
105号室から早織と新田が出てくる。
早織「帰ってもう一回シャワー浴びよ」
怜子と日比野を通り過ぎる。
日比野「どうもありがとうございました」
ホテルを出る早織と新田。
◯同・表(朝)
早織が笑って言う。
早織「なんだ、ちゃんと掃除してるじゃん」
新田「そりゃするだろう、格安でも」
◯同・104号室(朝)
濡れたままバスルームから出る文子。
シャワーが出続けている。
◯同・105号室(朝)
部屋を掃除する怜子。
UFOのお守りがあることに気づく。
怜子「え、これ……」
怜子、お守りを持って外へでる。
◯同・表(朝)
早織と新田が歩いている。
怜子、後ろから声をかける。
怜子「あの、すみません。こちらお忘れのようで」
新田「ああ、すみません」
新田、受け取ろうとする。
すかさず早織、
早織「それ捨てといてください。いらないんで」
怜子「……」
新田の手を引く早織。
怜子、お守りを強く握りしめる。
◯同・104号室(朝)
びしょ濡れのまま、呆然と立っている。
◯同・同・表(朝)
怜子がドアをノックする。
怜子「ふみちゃん。なにかあった?ふみちゃん?」
ドアを強くノックする。
怜子「ふみちゃん?ふみちゃん?」
大きな声で呼ぶ怜子。
強くノックする。
怜子「ふみちゃん?ふみちゃん?」
強くノックする。
怜子「聞こえる?ふみちゃん、聞こえる?」
強くノックする。
すると鍵が開く音が聞こえる。
小さくドアが開く。
びしょ濡れの文子が立っている。
怜子「ふみちゃん!」
シャワーが出続けていることに気づく怜子。
怜子「どうしたの!」
ドアを開け、文子を抱きしめる怜子。
泣き叫ぶ文子。
文子「なんで。なんで私だけこんな不幸なの!なんで私だけ、親もいなくて、携帯すら持てなくて、家にも住めなくて、普通に学校すらいけなくて。なんでこんな人生なの!」
強く抱きしめる怜子。
泣き叫ぶ文子。
シャワーが出続けている。
◯日本美術大学・外観
秋。紅葉が色づくキャンパス。
◯同・校舎
たくさんの生徒が行き交っている。
◯同・教室
授業を受けている早織。
◯同・テニスコート
練習をしている新田。
◯同・ミステリーサークルサークル・部室
ミステリーサークルかるたで遊んでいる蛍原と田宮。
◯大衆居酒屋・外観(夜)
多くの客で賑わっている。
◯同・室内
文子と怜子と日比野が座って話している。
日比野「ふみちゃん、外出るの久しぶりでしょう」
うなずく文子。
日比野「どんどん食べな!おごりだよ」
うなずく文子。
テーブルには料理が並んでいる。
豪快にビールを飲む怜子。
文子に話し出す。
怜子「ふみちゃん。あなたそろそろ立ち上がりなさい。泥沼に浸ってたって人生ドロドロのまんまだよ」
文子「……」
怜子「あなたが孤児で貧乏で恵まれてなくたって、世の中の人は知ったこっちゃないの。ただの超ネガティブちゃんって思われるだけ。負け犬って言う人もいるでしょうよ」
日比野「怜子さん、ちょっと言い過ぎだよ」
止めに入る日比野。
すかさず文子、
文子「どういうことですか?」
続ける怜子。
怜子「あなたの人生ハードモードかもしれないよ。でもあんたはイージーモードに挑戦するような人間じゃないの。そこらの甘ったれとはステージが違うのよ。クリアできる人間なの。クリアしてみなさいよ」
涙を拭う文子。
日比野、文子の背中をさする。
文子「でもどうすればいいの」
怜子「世間がそっぽ向くなら嫌でもみせてやりなさいよ。やり方なんていくらでもあるじゃない」
◯アダムスハウス・3階
ラウド、扉を開けようとするも開かない。
蹴っても蹴っても開かない。
レイス「これ引き戸じゃない?」
レイス、扉をあける。
ポカンとするラウド。
レイス「頭が固い!」
ラウド「すみません……」
扉を開けると、中には悪魔がいる。
今までになく小柄な悪魔。
ラウド「こいつが親玉か?」
悪魔「ふふ。ずっと見てたよ。子どもたちにひどいことしてくれたね」
ラウド「親玉だけあるな。ダントツで気持ちわりい」
悪魔「今日は、あんたにいいものを用意したよ」
悪魔の後ろからラウドの母・ジェリアが出てくる。
ラウド「母さん!」
ジェリア「ラウド!」
ラウドを抱きしめようとするジェリア。
レイスがすかさず止めに入る。
レイス「だめ!そいつはもう悪魔だよ」
ラウド「え?」
レイス「魂を抜かれてる。触れちゃだめよ」
ジェリア「そんなことないわよ、ラウド。私を信じて」
レイス「やめろ!斬れ!」
ラウド「そんなできるかよ!」
すると悪魔がジェリアの首を斬る。
ラウド「うああああ」
悪魔「バレちゃ用無しだからね」
ラウド、悪魔を斬ろうとする。
ラウドをかわし、ラウドの首を締める悪魔。
悪魔「うはは。この記憶はうめえや!」
レイス「ラウド!」
レイス、悪魔を斬ろうとする。
しかし吹き飛ばされてしまう。
苦しそうにもがくラウド。
◯ニュードリーム・104号室(夜)
文子、机の前に座り、『必勝』と書かれたはちまきをしめる。
壁には張り紙。『目標!其の一・シナリオ大賞受賞!其の二・引っ越す!』と書かれている。
パソコンに向かい、熱心にキーボードを打っている。
◯日本美術大学・表
構内を歩く文子。
◯同・ミステリーサークルサークル・部室
ミステリーサークルかるたで遊んでいる蛍原と田宮。
部室に入る文子。
蛍原と田宮、文子を見て驚く。
蛍原「ぶ、部長!」
田宮「ご無事でしたか!」
蛍原「一体、どこにいたんですか!」
田宮「ほんと。心配しましたぞ!」
文子「ごめん、ごめん。ちょっと自分探しに……」
蛍原「そんな。一言言ってくれたらいいものを」
文子「そうだよね……それでなんだけど、実は手伝ってほしいことがあって……」
田宮「なんですぞ?」
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