グリュエルパン太

#SUNDAY_NIGHT_NOVELS 小説書いたり、ラテアートしたり、社会人二年目…

グリュエルパン太

#SUNDAY_NIGHT_NOVELS 小説書いたり、ラテアートしたり、社会人二年目したり。 優しくて心暖まる言葉を心がけています。 創作とコーヒーのある人生を。

最近の記事

ココア【短編小説】

ココア 冬には匂いがあると思う。それは、気温の低さゆえなのか、あるいはしんと静まり返る街のせいなのか。とにかく冬には匂いがあるし、私はそれが嫌いでは無かった。 ---------------------------------------------------------------- その日も寒さが鼻の奥にツンと染みる冬の日だった。年の暮れ、街が赤と緑に彩られ、心なしか待ちゆく人々もいつもより慌ただしい。いつもはぼんやりしている事の多い明梨でさえも、足早になっていた

    • 影の形

      「影絵劇が見たい」 十時半の日差しが窓から差し込むベッドに座りながら陽向が言った。 「影絵劇?」 「そう、昔さ、テレビとかでやってたやつ」 掛け布団の中から下着を引っ張り出して起き上がる。陽向はもう立ち上がって、服を着終わっていた。 「お母さんに児童館に連れていかれて見た事はあったかもなぁ」 陽向は無言で洗面所に向かう。 私が陽向の家に週に1回か2回、あるいはそれ以上に入り浸るようになってから3カ月経つ。最初は、大学の飲み会の帰りだった。一人、また一人と家路へ向か

      • 富嶽三十六景を模写したら、葛飾北斎のすごさが分かった!

        会社の繁忙期も過ぎて、自分の仕事もひと段落したので、入社して以来初めての三連休を頂けることになった。 とはいうものの、急遽決まった三連休だったので、特に予定もなく、というか、暇だったので、「久しぶりに絵でも描いてやろうか」と思い立ち、葛飾北斎の『富嶽三十六景・神奈川沖浪裏』を模写することにした。 実は昔から葛飾北斎が好きで、小学生の頃近くの美術館に北斎が来ると聞いて母親に連れて行ってもらったりもしていた。北斎の富士山の大きさを利用しながら、ほかの対象をより壮大に見せる大胆

        • 車窓【~短編小説~Sunday night novels】vol.14

          埼玉から高速で東京に帰る時の夜景は、関東で三番目に美しいと思っている。首都高速大宮線から池袋線に入る辺り。ちょうど荒川と並走する高速を飛んでいる時、目の前には東京の夜景が広がる。 東京のベッドタウンが多い埼玉の南部は、夜は明るくない。しかし、その奥には『眠らない街』東京が広がっている。池袋、新宿、渋谷。煌々と夜空を照らす、東京の街の光一つ一つが、点となって輝く。ちょうど夜空が地上に降って来たかのような光景だ。 ちなみに1位は首都高速湾岸線から台場線に右折し、工場群の影から

        ココア【短編小説】

          佐賀のド田舎で生まれた僕が東大を卒業した話

          佐賀のド田舎で生まれた僕が東大を卒業した話 佐賀県武雄市 佐賀県武雄市。聞いたことがある人はあまり多くないだろう。隣町には、嬉野温泉で有名な嬉野市、有田焼で知られる有田町、ガタリンピックやむつごろうが有名な鹿島市と、知名度も魅力度も低い佐賀の中ではまあまあ有名な町が並ぶ中、僕が生まれたのは「武雄市」。そんなところで生まれた僕が、先日東京大学を卒業した。  正直、大して東大に思い入れも無いし、なんなら赤門がある本郷キャンパスに通うはずの二年間はコロコロコロ助に消し去られてしま

          佐賀のド田舎で生まれた僕が東大を卒業した話

          鬼怒川にて~グリュパン旅行記~

          VOL.6 龍王駅から隣駅の新藤原駅まで足を進めることにしました。今日の歩行距離すごそう。途中神社があったのでお参りして、駅に着いたのは電車の発車する30分前。暇だ。同じく電車を待つとなりの老夫婦の会話に耳を傾けながら過ごしました。そんな時間もたまにはいいですね。 そんなこんなで鬼怒川温泉駅に帰りつきます。ここから歩いて10分のところに「鬼怒盾岩大つり橋」という橋があって、これも景勝地らしいので向かいます。そしてこの吊り橋を渡った先に、昨日の船頭さんが言っていた展望台が!

          鬼怒川にて~グリュパン旅行記~

          鬼怒川にて~グリュパン旅行記~

          Vol.5 ①大自然の中へ三日目は朝6:30に起きて、朝風呂に向かいます。山の朝の空気は澄んでいて、季節からかかなり冷たく、露天風呂が気持ちよかったです。 ホテルをチェックアウトした後にアンケートに答えると売店が10%引きになる、とのことだったので、アンケートにばっちり答え、お土産に日本酒を買います。最近どこに旅行に行っても地酒を買うようにしています。お酒そんなに強くないんですけどね、、 今日の計画はひたすら自然の中をハイキング、です。マイナスイオン浴びようぜ。 駅ま

          鬼怒川にて~グリュパン旅行記~

          鬼怒川にて~グリュパン旅行記~

          Vol.4 ①おひとりさまのライン下り二日目の朝は授業から始まります。抜き打ちテストの対策をちゃんとしていたので安心です。オンライン授業も個人的には一定のメリットはあると思っています。好きなところで授業受けられるのなかなか楽しいですよ!理解できているなら問題無いと思いますし。 授業が終わってから、メインイベントである、ライン下りの会場に向かいます。意外と人が多い。予約していたのでスムーズにチケットを購入。ライフジャケットをもらい、船乗り場に向かいます。意外と階段が長かった

          鬼怒川にて~グリュパン旅行記~

          鬼怒川にて~グリュパン旅行記~

          Vol.3 ①強運の曇り男、東武ワールドスクエアへ雨があがったので、近くにある屋外施設に行くことにしました。東武ワールドスクエアをおとずれました。 この施設では日本と世界の多くの建造物が1/12スケールで再現されています。12は「東武」を表しているとか表していないとか。 日本のブースでは熊本城や大浦天主堂など地元九州の建物がミニチュアで再現されていてかなり親しみを感じます。世界の建物では、本物のように撮る角度を探し続けて一人で楽しんでいました。タージマハルと凱旋門はかな

          鬼怒川にて~グリュパン旅行記~

          鬼怒川にて~グリュパン旅行記~

          Vol.2 ①出発の時 初日、朝。電車は10:30新宿発だったので、少し早めに新宿に行き朝活をすることに。鬼怒川温泉まで直接行くことができる「特急スペーシアきぬがわ号」は新宿駅5.6番ホームから出る。実はホームが少し離れた場所にあるので、バスタ新宿のすぐ下にある改札からしかホームに行くことができない、という事を新宿駅に着いてから知った。危ない危ない。こんな事が起こるから、旅行に行くときは空港にも駅にも必ず一時間前に着くようにしている。 新宿駅近くのスタバでトールサイズの

          鬼怒川にて~グリュパン旅行記~

          鬼怒川にて~グリュパン旅行記~

          Vol.1(出発準備編) ①旅の始まり白樺派の文豪、志賀直哉は兵庫の城崎温泉に療養のために訪れ、現地で「城崎にて」という短編を書いた。内容としては、病気がちだった志賀が、城崎で目にした様々な生物の生きる様を見つめる中で、死についての考え方を少しずつ変えていくような、そんな内容だったと思う。 そして、私グリュエル・パン太は、鬼怒川にこもることにした。と言っても二泊三日だけだが。 新しく始めたバイト先のシフトが入るだろうと思い、今週は特に予定を入れていなかったのだが、来週か

          鬼怒川にて~グリュパン旅行記~

          「君色小説」あとがき全文公開

          先日、小説を出版させて頂いたことに関してnoteに記事を挙げさせて頂きました。出版した本のあとがきを全文公開することにしたので、よかったらどうぞ! 出版に際して あとがき まさか、自分が書いた小説を出版することになるとは、、、一番びっくりしているのは間違いなく僕自身です。長い長い駄文にお付き合い頂き、本当にありがとうございます。感謝感謝です。ダンケ! せっかくですから少しばかり自分語りをさせてください。 僕はコーヒーが大好きです。正確に言うと、コーヒーが生み出す時間が

          「君色小説」あとがき全文公開

          陽だまりのような小説~僭越ながら小説を出版させて頂きまして、、、~

           「まさかね」と言うのが今の正直な気持ちです。だって普通の大学生ですから。  小説を出してしまったんです。自分が出した本が手元に届いたときはやっぱり感動しました。感無量というか。  今回は出版を考えている人のためになれば、と、そしていつも読んで下さっている皆さんへの感謝を込めて、出版までの経緯をつづります。 ①最初は思い付きだった。 もともと文章を書くことが好きでした。というか、言葉にするのが好きでした。いつか小説を一本書いてみたい、と思っていました。構成がしっかりとし

          陽だまりのような小説~僭越ながら小説を出版させて頂きまして、、、~

          読書感想文:江國香織「東京タワー」をできる限りネタバレ無しで語る

           人というのは不思議なもので、大人になればなるほど効率的に器用に、そして同時に同じくらい非効率的に不器用になるものだと思う。  現代の日本において、多くの人は教育を受ける中で、「論理的に考える」ことを知る。そして、多くの人が自分はある程度「論理的に考える」ことができる人間だ、と思うようになる。し、実際間違いは無いだろう。  とは言え、はたから見るとある選択は全く論理的ではなく、非効率で、不器用な物に見える事も多くあるように思う。  『東京タワー』という作品は、その不器用

          読書感想文:江國香織「東京タワー」をできる限りネタバレ無しで語る

          50年経っても、あるがままに。~The Beatles Let it be~

          新しい世代が就活に突入する夏。およそ一般的とは言えない就活をしてきた僕にも、嬉しいことに後輩達から相談を受けることがある。 自分が就活生だったときもそうだったのだが、つくづく日本の就活という制度のずさんさ、意味の無さに辟易している。代行が横行しているWebテスト、就活コミュニティによる特に意味の無い面接対策、参加しないと選考に不利になるインターン。 そんなものに自分の将来を決められるのだから、就活生からするとたまったもんじゃない。でも、やらなかったら後悔するのは自分ってこ

          50年経っても、あるがままに。~The Beatles Let it be~

          【お知らせ】

          【お知らせ】Sunday Night Novelsに関しまして いつもご愛読いただきまして、ありがとうございます。初めてから約4カ月が経ちました。自分の中でもいろいろな発見があったり、皆さんから感想を頂く中で少しずつ文章が上手になってきたのではないかと思っています。 毎週日曜日に更新すると言いながら、たまに遅れてしまったこともありながら、自分の中では十分に力をつけることができたと思っています。 この度、Sunday Night Novelsの更新をいったん中止し、長編作