見出し画像

summer of 2016くらい?

 summer of 85を観に行きました。堪えるということができない。まじで。堪えられない選手権日本代表になれる自信がある。
 映画を観ながら、Aちゃんのことを思い出した。

 数年前、小中学生の頃にものすごく仲が良かった友人Aちゃんとご飯に行った。ものすごく仲が良かったっていうのは、多分嘘じゃないと思う。
 なんつーか、私達が小中学生の頃ってニコイチとかそういう言葉があった。コンビが流行ってた気がする、修二と彰とかいたし。彰派だったけど、今は修二が好きだ。まあなんというか、仲良いグループがあって、その中で二人組作って〜って言われたらいつも固まるような、そういうの。私にとってのAちゃんはそれだった。
 あとAちゃんは糞可愛かった。贔屓目ではなく、まじでモテていた。私は可愛い女が好きなのでハッピーだった。

 そんな私達だったが、別の高校に通うことになったあたりから物理的な距離ができて、初めてお互い知らない交遊の輪ができた。でも、Aちゃんとはまだよく遊ぶ仲ではあった。
 Aちゃんとのエピソードで忘れられないのは、夏に二人で炎天下の池袋に行ったこと。私達の遊ぶ場所は、ゲームセンター、カラオケ、ファッションビル、そして池袋だった。
 私達は心からオタクだった。オタクだったっつうか、私は今でもそうなんだけど。ラップで戦う某コンテンツにハマり、どことは言わんが居住地域を移したフッ軽なオタクである。オタクはいつでもぶっ飛んでいなきゃいけないし、ぶっ飛ぶための金をいつでも用意しておかなきゃいけない。閑話休題。

 炎天下の池袋、暑くて地面が歪んで見える気がする。私達の目指す乙女ロードは東口交番近くの出口から出ても結構歩く。しんどい。私は耐えきれず申し出た。
「水を……買ってもいいですか」
「あるよ」
 あるよ、って何? コンビニに寄りたい私を無視して、Aちゃんは徐ろにペットボトルをバッグから取り出す。めっちゃ飲みかけじゃん、その500mlのレモンティー。
 暑くてがぶ飲みするので購入したいですという私の要求に、「二本目買えば良いよ」と返される。ちげーーーーー! 私は一人で飲みたいのである。
 もともと二人で一つのものを共有することが多かったんだけど、でも飲み物はちゃうやろってあの頃の私も思ったよ。でも私達の間には共有してるものが多すぎて、きっと当たり前にそうしたんだと思う。

 しかし、私が大学に進学し、Aちゃんが就職の道に進んだあたりから、以前ほど会わなくなった。当たり前なんだけど、お互い別のコミュニティに所属してるから、別の交友関係があった。そして、Aちゃんは仕事があったし、私は大学の勉強があった。定期的に遊んでいたけど、私が就職する頃にはほとんど連絡をしなくなっていた。

 ところがある日、Aちゃんから突然連絡が来る。使用した駅のロッカーのナンバーが私の誕生日と同じだったから話したくなって連絡してきたという。モテる奴の言うことはちげーなと学んだ。
 そのまま久しぶりにご飯でも行くかとなり、会ったけど、会話が弾まなすぎてウケちゃったよね。大学を卒業したての私は、就職して正社員として働く楽しさを覚えた頃だったから、もうなんつーか仕事大好きだった。今も働きたくねえ〜とは毎日思うけど、仕事は楽しい。
 でも、Aちゃんは高卒で働いていたし、仕事大好きという訳でもなかったので私とは仕事への熱量が違った。そして、Aちゃんは別のステージに移行しようとしていた。結婚である。

 私とAちゃんは、昼に集合し、十八時には別れた。昔は日付が変わるまで遊ぶのが当たり前だったし、なんならカラオケで一夜を過ごしてからマックで茶をしばいてから帰ることも多々あった。今はできない。
 出会ってから初めて、お互いに見ているものが全く変わってしまったということを実感して、私も、多分Aちゃんもお互いにショックだったと思う。お互いショックだったのが分かるくらいには仲良かったし。
 帰りの電車も、話すことをずっと探してた。吊り革に掴まりながら、窓にお互いの顔が映って、たまに目が合うのが気まずかった。

 それからAちゃんとは会ってないんだけど、私は昨日、summer of 85を観てからずっとAちゃんのことを考えてたよ。Aちゃんと久しぶりに会う日の前日、私は確かに浮かれてた。なんとなく、私達はずっとサイコーに楽しかった頃のままで居られると思っていたから。
 今もたまにAちゃんに会いたいなって思うけど、アレックスやダヴィドのお母さんのように、きっと今は私は私の理想をAちゃんに押し付けてしまう気がするから穏やかな距離を取る。遠くに居るから良い。

 あと、原作の「おれの墓で踊れ」っていう言葉が実話に基づいているっていうのを知って頭抱えちゃったな。現実ってやっぱり面白い。

この記事が参加している募集

#映画感想文

66,723件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?