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効率的スキンシップ

彼はよく私の髪の毛を乾かしてくれる。

というのも、私が乾かすとついつい適当にやってしまうので、いつも髪がボサボサになりがちになってしまう。そういうのが見ていられなかったのがきっかけだろうな、と勝手に思っている。

彼の乾かし方はとても上手い。
その昔、私の髪を乾かしてくれるようになった最初の頃は普通だったのに。どんどんメキメキと上達してくれている。
ちなみに言っておくけれど、彼はそういう関係の仕事をしているわけではない。

お風呂から上がると、髪の毛を乾かしてくれようと待ち構えている彼の元へ行く。彼の前に座ると、丁寧にアウトバストリートメントを毛先を中心に揉みこんでくれる。その間には今日1日どう過ごしたかなどの他愛のない会話を始めてくれるから、まるでサロンに来たような気分だ。
ドライヤーが始まると声も聞きづらくなるので専ら私はスマホとお友達になる。髪が長く、毛量もかなり多いので結構時間がかかるので、SNSチェックやネットサーフィンにはもってこいだ。

ある程度髪の毛が乾いてくると、ヘアオイルを毛先に揉みこんでくれる。乾く手前でわざわざドライヤーを止めて、だなんて自分では滅多にやらない工程だ。彼はこなれた手つきで私の髪の毛を愛でている。「このひと手間がアイラブユー♪」だなんて口遊ながら。そうしてオイルを揉みこんだあと最終の仕上げのブローをしてもらって完成だ。

梅雨の時期でオマケに昨今の情勢で美容院もなかなか行こうに行けていない日々で私の髪の毛はいよいよ暴動が起こりそうなのだけれども彼の手によって何とかギリギリ持ち堪えている。兎にも角にも彼には感謝の気持ちでいっぱいだ。

余程の事がない限り、ほぼ毎日私の髪の毛を乾かしてくれている彼だけど、負担になっていないか、何となく義務のように感じてしまってたらどうしようかと思いそれとなく訊ねてみると、彼曰く、負担だとか義務だとか全く無くて、最初は何となくやってみたくてやり始めたものの、自分の手で髪の毛が綺麗になっていくのが楽しくて寧ろどんどんハマっているとのこと。

確かに彼は、物事を始めるとどんどんハマったり突き詰めたくなるようなタイプだ。私のボサボサ頭がましになっていくのは確かに彼にとってハマる要素であり、やり込み要素なのかもしれない。

もう1つ彼が言ってたことがある。

"お互い仕事をしてて、(特に私が)帰ってくるのが遅かったりするから、二人の時間がどうしても少なくなる。そこで、自分が髪の毛を乾かしたりしてあげることによって少しでも会話する時間が確保出来る。髪に触れることによってスキンシップにもなる。ほぼ毎日髪に触れることによって不思議なもので相手のコンディションが何となく感じることが出来る(らしい)。自分の手で大切な人の大切なパーツを綺麗にする喜びも得られる。それって素敵な事だと思うんだよね。"

思ってた以上に双方にメリットがあるなと思わず笑ってしまったし、そういう考えを持ってくれている彼に、あらためてときめいた。確かにスキンシップだったり会話だったり、どうしてもなかなかゆっくり時間が取れない私たちにとっては、とても理にかなっている。そこに義務や負担が生じてしまうと元も子もないけれど。今のところそういう訳ではなさそうなので、存分に彼に甘えようと思う。お返しといっては何だけど私もマッサージでも研究してみようかな……。