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適応障害になる前に出会いたかった!『Deep Skill ディープ・スキル 人と組織を巧みに動かす 深くてさりげない「21の技術」石川明著』の感想

この本に先に出会っていれば、適応障害になるほど我慢しなかったかもしれない。


きっかけはYouTubeチャンネル「Pivot」に著者の方が出演されていた回を観たから。「Deep Skill」という聞いたことのない単語と、「人と組織を動かす」というサムネイルの文言が気になって視聴したところ、ああ、自分に足りなかったのはこういうことだな!って切に思ったので、図書館で借りて読んでみた。

「Deep Skill」とは著者の造語で、

人間心理・組織力学への "深い" 洞察をふまえたヒューマン"スキル"

下記YouTubeより

ということらしい。

人間心理とは、会社の上司、同僚、部下、社長やクライアントなど、仕事で関わる様々な人々との関わりの中で、相手がどういう心理状態にあり、それに対して自分は相手をどう観察し、どう関わり、どうアクションすることで「成し遂げたい事」を進められるのか?という意味での「人間心理」。

組織力学とは、組織の中の権力、部署間の対立、新規事業へのリスク懸念などいろいろな要因があるなかで、どのようにコミュニケーションをすることで、うまく事を進めることができるか?という意味での組織力学。

特に自分にとって、「適応障害になる前に知りたかった!」と思ったのは、「嫌悪感を抱いた相手の対処法」。この本を読んで心構えができていれば、適応障害になる原因となった相手とのコミュニケーションも、もっと自分に負荷をかけずに行えていたかもしれない。
(余談ですが、自分の適応障害の原因は管理職としての業務負荷が高かった上に、特定の個人とのコミュニケーションにおける心理的負荷の許容値を超えたから。)


「したたか」に生きるということ

40代半ばの自分は、今の会社で5社目で8年目。今の会社が最長。それまではある程度で見切りをつけて転職をしてきたが、今の会社は社長とミッション・ビジョンが好きなので長く働きたいと思っている。

本書では「ずるさ」ではなく「したたかさ」を磨いて、周囲の人を味方につけ、仕事が上手く回るように嫌いな人でさえも上手く「利用」すると書いている。「ズル賢く」ではなく「したたか」なので、ちゃんと「誠実であること」が大事で、「信頼資産」こそが重要と言っている。

その上で、「仕事は野球の9回裏ツーアウトではなく、4回表ぐらいだと思え」とか、「大きな仕事はゲームのラスボス攻略のように楽しむ。そのためにちゃんと準備して挑む」と言っている。

どこかで見かけた「人生は死ぬまでの暇つぶし」とも通づるような言葉だなとも思いつつ、1章の終わりに書いてある「仕事はクライアントやエンドユーザーのためにやっているので、上司や同僚のためにやっているものではない。いざとなったら退社というカードを切れば良い」っていう言葉で、ああ、今ままで自分は転職はしてきたものの、「仕事」を責任重大で100%真面目にやらなきゃいけないものっていう感覚でいたなと思った。それこそ失敗が許されない9回裏ツーアウトのような感覚。

「会社のことで深刻になるほどのことはない」という「達観」を養うことが大切。

「Deep Skill 」本文より

今の会社は好きだし長く働きたいとは思うものの、確かに自分の人生を考えたときに、「深刻になるほどのこと」にし過ぎてた感じがするので、これからはもうちょっと気楽なスタンスでいきたい。そのために必要なのが信頼され、愛されるためのDeep Skillが必要なんだなと思った。

希少な人材であることは、組織内のポジショニングでローコスト

同じようなスキルセットの人がいる中で戦うにはレベルが8〜10必要なところ、自分にしかできないことがあるとレベル1〜3でも社内では重宝される。

これも最近どこかで聞いた話だが、100万分の1のスキルを手に入れるよりも、100人に1人が持ってるスキルを3つ持ってれば、それの掛け合わせで100万分の1になることができると言っていた。

つまりめちゃくちゃ希少なスキルを持てというわけではなく、いろんなスキルの組み合わせでも良いから「自分にしか出来ないこと」っていうのを持ってる人間になることが大事なんだなと思った。

「壁打ち」の効果と正しいやり方

現職でも「壁打ち」という言葉は使われていた。とはいえ本書で語られているほどラフな感じではなく、ちゃんと準備が必要な雰囲気はあったと思う。ちゃんと「個人の主観として、ラフデザインの評価」をもらうためにやっていた感じがある。

本書での壁打ちは「何も決まってない前提での対話」という内容だった。目的と企画の断片だけがあって、思いつくまま感想などをもらう。そのうち壁打ち相手から、自分では気付けなかったポイントや落とし穴がポロッとでてきて、解決の糸口になるような、そんな対話が壁打ち。気負わず、ラフな会話をする。他人の脳(知識、知見)を借りるっていうのが正しい壁打ちらしい。

壁打ちにはそれ以外にもメリットがあるっていうのは新しい気づきだった。一度壁打ちをしておくと、相手に関連情報が入った時に教えてくれたり、壁打ちをしたことで相手にも当事者意識が芽生えて、「根回し」をしたような状態になるとのこと。つまり上手く活用すれば味方を増やすために壁打ちをするっていうのも全然ありだなと思った。

なにかを成し遂げたい時は「プロセス自体を企画する(企てる)」

新規事業だったり、新しい取り組みをするとき、そのアイディア自体は良いものだとしても、タイミングや会社の方針と合わなかったり、ステークホルダーの意図から大きくハズレている場合がある。だから自分が何かを成し遂げたいなら、それを成し遂げるためのプロセス自体も企画する(企てる)必要があると。

確かに今までにも何度もあった。上司からふわっと「この四半期ではこれやって」みたいな指示。一番記憶に残ってるのは、それをやる意義が全く分からず、貴重な業務時間をなぜそんなことに使うのかが理解できず、結局やらずに終わり、自分の評価が下がるみたいな経験。

対話は何度もしたし、その都度なんの意味があるのか?も確認したが、上司の頭の中で言語化出来てないし、それでも上司の「指示の正当性」はすごく強く言われる。(ほんとに、日本語を喋っているはずのに、この人何を言ってるんだろう????ってずっと頭の中がハテナで埋まってた。)

本書を読んで、今思えば「それをやる意味はない」というのを分からせるために、もっと「企てる」必要があったんだろうなっていうのを今回本書で学んだ。

合理性の罠。きっと組織が大きくなればなるほど出てきそうな罠。

既存の事業には実績もあるから予測ができる。新規事業や新しい取り組みは前例もないからやってみないと分からない。だからリスクを正確に判断できない。
ベンチャーの場合、おそらく合理性よりも「思い」の方が強いから、どんどんチャレンジして、高速にPDCAを回して失敗から学ぶことのほうが多そう。だが大きい企業になると一つの失敗の損失が大きそうなので、新規事業などは二の足を踏んでしまいそう。(自分のいる会社も昔は意思決定が早かったが、今は意思決定も遅いしいらぬ心配ばかりをしている気がする。)

本書では「合理性」よりも「意思」が優先されると書いてある。議論が停滞し、合理性ばかりを考えてチャレンジしなくなった時、「この会社はなんのためにあるのか?」に立ち戻り、そこから意思決定をすると。

こういう時のためにミッション・ビジョンが明確に言語化されていて共通認識になってることが大事だなと思った。

調整とは"妥協点"を探すことではなく、本質的なWin-Winとは何かを探すこと

自分の前の会社でもよくあった、制作サイドと営業サイドのバトル。クライアントの要望を鵜呑みにする営業と、制作ポリシーに反するからそれはできないという対立。

でも「本質的にクライアントが望んでいることはなにか?」を一緒に考えて、クライアントも自分たちもお互いにハッピーになるための対話が「調整」であると本書では書かれている。

Win-Winであることはホントに大事。妥協したり、強く反発したりすると、クライアントから次の仕事が来なくなったり、こちらのブランディングが崩れたりする。どちらも悲しい。

嫌いな人はキライ! 人は変わらない! だから利用する!

言葉が強いかもしれないが、人間そうそう性格は変わらない。
じゃあどうやって上手く付き合っていくか。感情ではなく「目的合理性」に基づいて冷静に動けばいいと本書には書かれている。

嫌悪感は解消しない。それはもう割り切る。期待するだけ無駄。その上でその人の長所や強みを観察し、その人にあった仕事を与え、目的のために役に立ってもらう。それ以上の関与はしない。

決定的嫌悪感を抱いた場合どうしたらいいのか?という問いには、その人の立場を観察してみると書かれている。会社の中での立場などを観察し、その人の「哀しさ」が見えた時、嫌悪感は消えないが"理解"はできる。その理解が出来た時に、自分の中にももしかしたら同じような共通点があるのでは?と「共感」できたらDeep Skillとしては合格点。

正直、この章の内容にもっと早く出会いたかった。ある意味「割り切った」関係を意識できれば、組織としての「目的合理性」のため、その人のスキルは上手く使うが、それ以上の期待はしないという気持ちの切り替えが出来た気がする。

自分は管理職として、「部下をスキルアップさせて、昇給・昇格させるのが上司の義務」と考えていたので、おそらく過剰に関わってしまったんだと思う。成長が見込めないなら、上司としての業務の「最低限のフィードバック」だけして、それ以上のサポートはするべきではなかったという反省をした。

今となっては、"ちゃんと上司としての役割を果たした上"で、指摘したことの改善がみられない部下、感情的に反発する部下はそれ以上期待するべきではない。だったら頑張ってる部下に力を注ぎたい。

もちろんそれまでのやり方で一緒に成長できた部下もたくさんいるので全てが間違っていたとは思わないが、世間的には人間が10人いれば2人は味方、7人は無関心、1人は嫌われると言われているので、ちゃんと人を観察して、その人との付き合い方を考えるべきなんだなと学んだ。

この本から学んで、これからアクションしたいこと

数が多くなってしまったが、できるところから小さくやってみようと思うことをリストアップしてみた。仕事以外でも大事なことだと思うので普段の生活から意識したい。

  • したたかに生きる。自分の目的合理性に基づいて、環境や周りの人を活用して生きる。生きるための「目的」が大事。仕事だと一つ一つの案件はそれが明確。でも人生も同じだと思う。自分が幸せに生きるために、したたかに、誠実に生きる。

  • 経験知の量とメタ認知が大事。引き出しを増やすためにとにかく活動する

  • 誰かと会話するときは「壁打ち」を意識する。仕事じゃなくても相手に興味を持ち、相手を観察し、相手の話を「論理的に」聞き、時には相手にメリットのある自分の思いつきを提供する

  • 何かを成し遂げたい場合は「プロセスを企てる」。

  • 合理性に囚われず、時にはリスクを承知でチャレンジしてみる

  • 対立ではなくwin-winを考え、対話で「調整」する

  • 人は変わらないと割り切る。嫌悪感を感じる相手からは離れる。ただ、相手の立場を観察して相手の「哀しさ」を「理解」することはできる

  • 「怒り」は使命感につながる原動力になりえる。何か自分が怒りの感情を覚えた時には、それを何かを成すための根源とする

怒りは使命感

著者も実際「怒り」が使命感になったとかいているが、自分は適応障害になったときに「強い怒り」を感じた。こんなに頑張って仕事して、部下のために心をすり減らして、会社に貢献してきた結果がこれ?っていう。(そして細かいアレコレが重なって、さらに怒りは増した。傷病手当が一般的な割合よりも少ないとか)

だから休職期間中はただ休むだけじゃなく、心身ともに絶対パワーアップしてやると決めた。でも適応障害の症状もあり、はじめは頭脳を使うことは全く出来なかった。時間が経って徐々に読書ができるようになり、仕事や特定の個人のことを思い出さない限りは日常生活は支障がないぐらいには回復した。そしてこうやってアウトプットもできるようになった。

たぶんこの「怒り」はずっと消えないし、強い教訓になっている。良くも悪くも会社というものに依存してきたので、「自分で価値を生み出し稼ぐ力」が必要だなと思った。それが今いろんな本を読んだり、スキルアップのための学習の原動力になっていると思う。

本書で学んだことを活かして、これからの人生を「したたか」に生きていきたい。

著者の石川明さんについて

代表取締役 石川 明

・1988年に株式会社リクルートに入社以来、
一貫して社内で新規事業を担当。

・1993年~2000年まで7年間、新規事業開発室のマネージャとして、リクルート社の企業風土の象徴である、社内起業提案制度「New-RING」の事務局長を務め、新規事業を生み出し続けられる組織・制度つくりと1,000件以上の新規事業の起案に携わる。

・2000 年にリクルート社の社員として、総合情報サイト「All About」社(JASDAQ 上場)を創業。10 年間、事業部長、編集長等を務める。

・2010年に独立し開業。

経済産業省主催「始動(グローバル起業家等育成プログラム)」講師・メンター/上智大学卒(1988)早稲田大学ビジネススクール修了(1993)/大学院大学至善館特任教授/明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科客員教授

株式会社インキュベータ サイトより

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