見出し画像

人は些細な会話で救われる。

ある昔の出来事です。


何の変哲もない日でした。


大学4年生にもなりゼミ以外で学校に行く事が無くなった、そんなある日の話です。


もともとゼミの人数も少なく、人の集まりが悪い日だった為か、授業開始を1人で待っていたのです。


待ち時間といえば、「読書」です。


遠い昔の記憶なので何を読んでいた本は思い出せない。


でもその日の出来事は覚えている。


1人読書をしていると、教授が少し早く現れた。


「おう!はやいなぁ」


教授は人の名前を覚えるのが苦手だ。


それも仕方ない。御年72歳。自分達の代が最後のゼミになる。


「本読んでんのか。えらいなぁ」


教授はそう言った。


うちの教授は初めて会った時からそうだった。


常に本を読め。本を持ち歩け。と言っていた。


「お前くらいやったな。常に本を持っていたのは。」


「お前の良いところはそこだな。それ以外はダメだけど(笑)」


「いやいや!何言ってるんですか!他にも良いところはありますよ!(笑)」


久しぶりに人に褒められた気がした。


就活に息詰まり、今後の不安に悩む時期だった。


そんな事で褒められて何を言っているんだと思うかもしれないが、嬉しかった。


何かモヤが晴れた気がした。


教授は覚えていないだろうし、そんな気も無かっただろう。


最近本を読むと思い出す。この日の会話を。


人に褒められる喜びを。


些細な会話で人を助ける事があるということを。





この文を書いでいる途中に読んでいた本を思い出した。


それは、薬丸岳の【友罪】です。



ここまで読んでいただきありがとうございます。


またどこかでお会いできることを願っております。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?