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「4%の男」 - 結婚して男性が名字を変えると人生がどう変わるか -

4%の男

入籍時に妻の名字を選択する男性はわずか4%しかいないそうです。

私はその「4%の男」です。

この文章では、男性が名字を変えることで生じる影響について考察します。

私が名字を変えた理由

入籍時に私が妻の名字を選択した理由は3つあります。

第一に、妻の名字が非常に珍しかったからです。
「紺野」という旧姓も気に入っていました。色の中でも紺は好きですし。
ただ、「御守」という妻の名字の強烈なインパクトには勝てません。レア度的にも紺野がRだとすると御守はSSSSRくらいの差があります。人生得しそうだなと思いました。実際、婚姻届を提出した直後に立ち寄ったATMで12万円拾い、人生の勝利を確信しました。(ちゃんと警察に届けました)

第二に、面白い経験ができると思ったからです。
9割以上の人が選択しない選択を敢えてする、という逆張りによって見えてくるものがあるだろうと考えました。想像するだけなら誰でもできますが、一次情報は当事者でなければ得られません。

第三に、妻が自分の名前で仕事をする人だったからです。
研究者や芸術家のように、仕事をする際に名前が残るタイプの職に就いている場合、名字が変わってしまうとトラックレコードが途切れて分かりづらくなってしまいます。

今振り返るとどの観点でも正解だったと思っています。後悔したことは一度もありません。

名字の変え方と、それが意味するもの

婚姻届には「妻の氏」「夫の氏」というチェックボックス式の選択肢があります。どちらかにチェックを入れることで結婚後の夫婦の名字が決まります。これが名字の変え方です。

この名字の変え方からは2つの意味が見出せます。

第一に、入籍時に名字を変えるのは非常に簡単な手続きだということです。別室に呼ばれて「あなたの名字がパートナーのものに変わりますが、いいんですね?」などとわざわざ聞かれたりはしません。つまり、めちゃくちゃハードルがあるわけでも何でも無いのですが、96%の男性は妻の名字を選択しません。

第二に、名字の選択はカップルが主体的に意思決定するものだということです。デフォルトで夫の名字が選択されているわけではありません。フラットに2つの選択肢が提示された上で、そのどちらかを選んでいます。つまり、システム的にレコメンドされているわけでも何でも無いのですが、96%の男性は妻の名字を選択しません

男性が名字を変えるデメリット

名字を変えることで事務的に面倒な作業が多発します。
自分の名前が登録されている全てのシステムで名義変更手続きをする必要があります。

公的なものでは運転免許証、健康保険証、パスポート、マイナンバー、住民票など。ものによっては再発行の際に費用がかかります。それぞれ窓口に行く必要があるので1日2日はお休みを取る必要が出てきます。エストニアのように国民1人ひとりが番号でidentifyされて全ての行政手続きが電子化されていたらどれほど良かっただろう、と思います。

ライフライン的なものでは銀行、保険、クレジットカードなど。特にクレジットカードは厄介で、名義が変わるとカード番号まで変わってしまうものがあります。紐付けている全ての決済がエラーになってしまいます。私が愛用している日本最大級のシェアを誇るカードがその仕様だったので、非常に困りました。頼むよ楽天カードマン。

これらの変更手続きには順番も考慮する必要があります。システムAを変更するためには身分証Bが必要で、身分証Bを変更するためには身分証Cが必要で...と言った具合です。
入籍とハネムーンを近い日程で組むカップルも多いですが、パスポートの名義が正しく変更できていないために空港で詰むケースも相当あるようです。

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ここまで読んでお気づきかもしれませんが、これらのデメリットは男性に限った話ではありません。女性が名字を変えた場合と全く同様です。つまり、名字を変えることでデメリットが生じてしまうのは、変える側が男性なのか女性なのかに関係しない、システム全体のエラーなのです。

一方で「女性ではなく男性が変えたからこそ」という男性固有のデメリットや不利益というものは特に感じたことがありません。

私は長男ですが、姓の変更について実家と議論になったことはありません。大学はここにする、就職先はここにする、一人暮らしはここに住む、といったこれまでの人生における決断の報告と同様です。

業務上も支障はありませんでした。入籍後も旧姓をそのまま使っていたので名刺もアカウントも変える必要がありませんでした。
(注:私はこれまでずっと旧姓使用してきましたが、直近の転職を機に戸籍名に切り替えることにしました。これは何かの不都合によるものではなく、転職先はB向け事業なので御利益がありそうな名前の方がいいかなと考えてのことです)

男性が名字を変えるメリット

デメリットについては男性固有のものがない一方で、メリットは男性固有のものがあると思います。なぜなら4%の希少種になるからです。珍しいものには相応の付加価値が発生します。

第一に、新しい視点を獲得することができます。
当事者として経験しなければ分からないことや見えないことがたくさんあります。海外留学する、ペットを飼う、髪を染める、といった人生の選択によって視点が増えるのと同様です。それ自体に意味があるとは断言できませんが、視点は多い方が人生面白い、と私は思っています。

第二に、話のネタが増えます。
他人が経験していない珍しい体験はコンテンツになります。また、同じ経験を共有した者として、既婚女性の96%とは改姓あるある話ができます。普段あまり話のネタを持っていない自分としては助けられます。

第三に、妻の親族に受け入れてもらいやすくなった気がします。
新しい人が既存コミュニティに入ってくる時、郷に入って郷に従う姿勢があると好感を持たれやすいものだと思います。「日本大好き」みたいなTシャツを着た海外旅行者から道を聞かれたら親切に答えたくなるような心理です。

妻の名字を選択しようか迷っているあなたへ

男性のあなたが名字を変えても、別に人生は大して変わりません。名札を下げて歩くわけでもないので誰もあなたが名字を変えたかどうかなんて知りません。実家との両親や兄弟と連絡を取る頻度が変わったりもしません。

選択肢はフラットに存在します。奥様と話し合って決めればいいと思います。
これからの夫婦生活で選択の場面は無数に現れます。ソファは白にするか黒にするか、ペットを飼うか飼わないか、住まいは山梨か神戸か。その時2人はどうやって決めるのでしょうか。それと同じです。どちらかに強い意向があればその気持ちを尊重する場合もあるでしょう。

他の人と違う選択をするのは怖いものです。また、何かを変えるというのは怖いものです。それでも、もし奥様が強い意向を持っていて、あなたが奥様の気持ちを尊重したいのであれば、自分の恐怖心に打ち勝って、「折れれるな」と考えてみてもいいのではないでしょうか。

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