ホラーで笑う コントで怖がる
自分でも信じられないけどホラー映画が好きになってきた。最近のことだ。
少し前まで身の毛がよだつほど苦手で、レンタルDVDの恐怖作品ジャンルの棚も避けていた。ホラー好きの神経が理解できなかった。
怖い作品を見れるようになったきっかけはいくつかある。大きな要因は「来る」と「ヘレディタリー」をみたことだ。
ホラーの楽しさを教えてくれた映画
特に「来る」はホラーが苦手な人にも超オススメ作品だ。恐怖って楽しいんだ、と教えてくれた。ホラー映画にしては珍しい少年漫画的なアツい展開が何度見てもワクワクする。
監督は「告白」の中島哲也監督。ポップと悪意が織り交ぜられたストーリー・画作りが超クールでカッコいい。
幽霊モノのホラーだが、「怖さ」以外の感情もしっかり掻き立てられる。うわべだけの人間関係、不倫、不信、孤独、育児疲れまで。でも根底にずっと”楽しさ”が流れてる。不快になれるエンタメって感じだ。
あと当時めちゃくちゃ話題になったが、タリエ(柴田理恵)が格好良すぎる。これはもう見た人全員が話題にしてた。ぜひ本編で確認してほしい。
「ヘレディタリー 継承」のキャッチコピーは「史上最恐」。おっしゃる通り凄まじかった。序盤は何がこんなに怖いのか分からなかった。
相方の土岡いわく「最初はなんの映画なのか分からなかった。分かった時めちゃくちゃ怖くて凄い映画だと思った」とのこと。
この映画で好きなのは「劇中で最も小さい音で、最大の恐怖が噴出するシーン」がある。粋だ。やられた!と思う。ばぁ~!!(絶叫)って大きな音を出すやつとは一線も二線も画す。
あと何度か見返して、止めながら見たらめっちゃ怖かった。これは宇多丸さんが言ってて気付いた。
最終盤の展開の凄み。見終わった後のえもいえぬ感情は名前がつけられない。見た人がいたら語りましょう。
どちらもネットフリックスで見られます。
そういえば、ホラーに触れる機会が増えたのはサブスクの登場も大きい。
映画館は暗くて怖いし、視聴を止めたくても2時間は監禁されるし。レンタルDVD時代はホラーをわざわざ借りるのが勿体なく感じていた。サブスク配信で手軽にホラーを収得できるようになったのがよかったネ。
木田さんとネトフリでみた韓国ホラー映画「コンジアム」も凄く怖かった。
お笑いとホラー
ホラー映画は昔から見たいと思っていた。僕がお笑い芸人だからだ。意外と思う人もいるかもしれないけど、ホラーとお笑いの共通点は多い。
お笑いと恐怖は表裏一体だなんてことは昔からよく言われている。怖いものにはお笑いのヒントがたくさん散りばめられている。
ネタをみているとき、表現が行き過ぎてて思わず怖くなることがある。
一方、ホラー映画をみているとき、思わず笑っちゃうことがある。「呪怨」をみて笑う人は一定数いる。
「エクソシスト」も今見たら笑っちゃうもんな。雷鳴のシーンで嘘みたいにクッキリ悪魔の顔が映るシーンあるし。
とり憑かれた女の子が口悪すぎて女性器名称を叫ぶし。談志師匠の枕じゃん。
(悪魔が卑猥なのおじさんみたいで笑っちゃうんだよな)
「ヘレディタリー」も、何度も見ると最後の方は笑っちゃう。僕が恐怖シーンの真似をするとみなウケてしまう(怖がってほしいのに)
お笑いとホラーの関係について興味深い話を読んだことがある。
たしか黒沢清監督のインタビューに書いてあったけど、ホラー映画って撮影時はめちゃくちゃ爆笑が起きるらしい。現場では笑いが絶えないそうだ。
そしてウケればウケるほど上映されると怖いシーンに仕上がるという。逆に現場で盛り上がらなかったシーンは本番でもさほど怖くないらしい。不思議なものだ。
お笑いとホラーの共通点
ホラーは観客を「驚かす」ものだ。異論はないと思う。我々はおっかなびっくり見るものだ。
この場合の「驚き」とは、うわぁ!と声を出して仰天する類いだけではなく、予想を裏切られて意外だと感じる、なども含む。
違和感に気づく。気付いたら驚く。
これってお笑いも同じじゃないか。『すべての人は笑う前に驚いている』なんて文言の本がベストセラーになっているし。予想(フリ)を裏切られる=驚くから笑うわけだ。
ホラーもお笑いも、人を驚かせる表現なんだ。
簡単に言えば心地よく驚かすとお笑いで、不快に驚かせばホラーだ。
なんとなくこんなグラフに表せる。
"驚き"のx軸、快感のy軸において、正負の位置にあるのがお笑いとホラーではないかと。超大ざっぱに言ってるけど。
バカ殿でお馴染みの「鏡に映った自分が違う動きをするやつ」。これはホラーでもありふれた演出じゃないか。
(バカ殿の往年のやつと、鏡の中の自分が勝手に笑い出す「ヘレディタリー」の1シーン)
同じ現象が笑いを誘ったり、怖がらせている。面白いことも怖いことも微妙な差異でしかないのだ。
両刀使い
お笑いとホラーは共通点が多いので、達者な人は両方できることが多い。
石黒正数先生なんか典型だと思う。「それでも街は廻っている」や「外天楼」の作者だ。
コメディとホラーチックなシリアス作品の両方を手掛けるが、実は同じ振り子理論で作られていると思う。ホラーが描ける人はコメディも描ける。
怖そうなフリを楽しく落とすのが「それ町」
(怖い宗教施設だと思ったら劇団の大道具だった)
くだらないフリをオドロオドロしく落とすのが「外天楼」
(中学生男女のたわいもないエロ本ネタかと思いきや、実は…)
「カメラを止めるな」もそんな感じだった。
余談だけど「モンスターズインク」も怖がらせることに特化した彼らが、笑わせるほうにスムーズにジョブチェンジできてたのもこういうことだったりして。
結論として、お笑い芸人はホラー映画を見とくとお得だな、と思う。
まだお笑いでは見つかっていないが、いずれ面白くなる表現が恐怖の中に眠っている。
同居人のガクヅケ木田さんもホラーが大好きだ。
「ギャビンと僕」という木田さんのユニットコントがある。
可愛い男の子ギャビンをバイの木田さんが追いかけ回すだけのコントなんですが面白くて。
「ギャッビィ~~ン♪」っていいながら追う様は完全に「シャイニング」ですよね。
意図的にやられてるかはわかりませんが。
木田さんの頭の中には、目を背けたくなるような嫌な表現がアカシックレコード並みにぎゅうぎゅうに詰め込まれている。
ホラーが苦手な人へ
ここからはホラーが苦手だけど克服して楽しみたい、という人向けです。苦手部門別に分かれています。
・血が苦手な人
血が苦手って人、一定数いますね。男女問わず。
そんな方にお勧めの作品を挙げます。ホラーではなく、むしろコメディですが。
「地獄でなぜ悪い」
映画館で一番笑った作品です。1分くらいずっと爆笑し続けた。血がこんなに楽しく噴き出る作品もない。
血が噴水のように吹いて虹がかかる描写のおかしさよ。苦手な友達がこれをみて流血描写を克服してました。
・幽霊が怖くて無理な人
僕は幽霊の類をまったく信じていません。だからホラーを作品として楽しめてます。
幽霊を信じてて、怖すぎるから遠慮してるという人には上岡龍太郎師匠の動画をお勧めします。
オカルトがとてつもなく大嫌いな上岡龍太郎さんが、自称霊能力者をボコボコにする動画です。これは凄い。
オバケを信じてる方がより怖がれると思うので、邪道かもしれませんが。
・ホラー映画を怖くなく見る方法
上述のガクヅケ木田さんに教わった方法です。ホラーが怖すぎた時に使える緊急避難策。
それは「敵・オバケ側」に感情移入することです。
人間に感情移入するから怖いんです。オバケに肩入れすると見え方が一気に変わります。
僕と木田さんは韓国ホラー「コンジアム」でこの方法を試しました。
怪物が出てきたら「殺せ!」「行け!首を食いちぎれ!」とエールを送る。
主人公たちが泣き叫んでたら「こいつら人間が悪いんだ!やっちまえ!!」と絶叫。
人物が幽霊に部屋の奥に引き摺り込まれたら
「ようこそォ!!キモシェアハウスにィ!!ご招待〜♪」という具合です。
幽霊の応援上映みたいになって楽しい。
なんなら、敵側視点だと上手くいきすぎる(どんどん人間を殺せる)ことが多いので、達成感・爽快感すら味わえます。
忠告しておくと、マジで怖くなくなって面白みも激減するので注意です。怖すぎて無理な時のとっておきです!
皆様もぜひ、生活にホラーとお笑いを!刺激的な毎日になること間違いなし!
とりあえず「来る」を見てない人は騙されたと思って見てください!
P.S
僕が好きな怪談も紹介します。怪談和尚のインタビュー記事です。よければ。納涼納涼!
https://bunshun.jp/articles/-/47541?page=1
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