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【読書】そして、バトンは渡された

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2019年本屋大賞

▫️作者
瀬尾まいこ(せお・まいこ)
1974年大阪府生まれ。大谷女子大学文学部国文学科卒業。2001年「卵の緒」で坊っちゃん文学賞大賞を受賞し、翌年、単行本『卵の緒』でデビュー。05年『幸福な食卓』で吉川英治文学新人賞を、09年『戸村飯店 青春100連発』で坪田譲治文学賞を、19年『そして、バトンは渡された』で本屋大賞を受賞。他の著書に『天国はまだ遠く』『優しい音楽』『強運の持ち主』『温室デイズ』『見えない誰かと』『ありがとう、さようなら』『僕の明日を照らして』『おしまいのデート』『僕らのごはんは明日で待ってる』『あと少し、もう少し』『春、戻る』『傑作はまだ』などがある。

▫️あらすじ
父親3人、母親2人との死別、離別を繰り返し何度も苗字が変わる境遇で育つ優子と、各々のやり方で子供と向き合うその時々の親の物語。産みの母とは死別、育ての母である梨花、梨花の再婚相手泉ケ原さん、梨花が家を出ていってしまうが最後の父親の森宮さん。傍目からは不幸に見えるが不幸と感じたことのない優子は、最後は自分の意思で苗字を変える。

「守るべきものができて強くなるとか、自分より大事なものがあるとか、歯の浮くようなセリフ、歌や映画や小説にあふれてるだろう。そういうの、どれもおおげさだって思ってたし、いくら恋愛をしたって、全然ピンとこなかった。だけど、優子ちゃんが来てわかったよ。自分より大事なものがあるのは幸せだし、自分のためにはできないことも子どものためならできる」

そして、バトンは渡された

▫️感想
人は自分がどこから来て今ここにいるのかといったルーツをどこかで感じていることで生きていけると思うが、この物語ではそのルーツを自ら、もしくは受動的に作る過程を見せつけてくる。ルーツは与えられるというより作られていくということなのだと感じる。
私自身、歳を重ね、子供だったところから親になった。今は親としての自分が生活の大宗である。だからこそ親の揺れ動く気持ちを感じ引き込まれていった。適応能力の高い主人公優子は人との距離感覚に優れた素敵な高校生だが、ありありとした映像として映し出されるのは魅力的な親達だ。
優子と離れ離れに暮らす血のつながった水戸さん、資産家で子供に寄り添い静かに見守る泉ケ原さん、自分の役割を見失いそうな生活に不安を子供と一緒にいることが存在意義だと考えている森宮さん、子供のために全力で生きながら自分の気持ちを裏切ることができない梨花さん、登場する親達の姿は、私達がこうありたいと願う親の形ではないだろうか。
ラストシーンは私もまだ経験したことがない親の気持ちが代弁されている。巣立つ子供に向けて自分より大事なものがあると伝える親心は暖かい気持ちで涙が滲む。子供は子供目線で、親になりたてのとき、老いていくなかで子供が成長したとき、生活のステージが変わるその時々で読み返したい一冊である。

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