
研究とビジネスの距離を縮めたい (伊達洋駆氏インタビュー #1)
こんにちは!GUiDEE開発チームのモイです!
今回は、ビジネスリサーチラボの伊達洋駆さんのインタビューをお届けします。
伊達さんは、研究者としてのトレーニングを積んだ後、ビジネスリサーチラボを創業。論文や最新研究といったアカデミック方面の知識と、ビジネス現場の豊富な経験の双方を組み合わせて、人事領域のサービスを提供しています。
そして、私たちが開発しているGUiDEEの中核となる「アセスメント」機能の設計もお手伝いいただいています。そんな伊達さんに、日本のHR分野への思いや今後の展望などをたっぷり伺ってきました。3回シリーズの第1回は、伊達さんの仕事内容やこれまでの経歴について紹介します。
組織行動論の研究者からビジネスへ
——伊達さんが代表を務めるビジネスリサーチラボは、どんな業務を行なっているのでしょうか。
人事領域で調査やコンサルティングを行なっています。人事領域は、細分化するといろいろな領域がありますよね。例えば採用、評価、キャリア開発、さらに最近はダイバーシティなどもあります。ビジネスリサーチラボは、それら幅広い領域をカバーしているのが特徴ですね。
もうひとつ、私が元々研究者だったということで、研究の知見を用いていくのも私たちのサービスの大きな特徴です。学術界で積み重ねられている「研究知」と、私たちがこれまで企業様の案件で培ってきた「実践知」を融合してクライアントに提供する、ということをやっています。
具体的なクライアントとしては3つのタイプがあり、ひとつは企業のHR部門などに直接調査やコンサルティングを行うケース。2つ目はHRサービスを提供する事業者と組んで彼らのクライアントにサービスを提供するケース。そして3つ目は、今回GUiDEEの開発に参加したように、HR事業者と一緒にプロダクトを開発するケースです。プロダクトというのは、今回のように診断ツールを作る場合もあれば、組織に関するサーベイやレポートを作る場合もあります。
——なぜ伊達さんはHR領域を研究しようと考えたのですか。
私はもともと教育心理学を学んでいたんです。学校教育を科学するようなことを研究していました。ところが、あまり肌に合わず(笑)。
ただ心理学には関心が高かったので、心理学をいかしながら自由に研究ができる分野はないものかと探し、経営学の中の組織行動論という領域にたどり着きました。教育学から経営学というと大きなキャリアチェンジに感じるかもしれませんが、どちらも心理学をベースにしているという点で、発想の仕方や研究方法など似ている部分も多くあります。
ところが経営学にやってくると、研究と市場・実務の間に距離があることに気づきました。教育学の分野では、わりと教育に介入する機会があったんですね。例えば、調査結果を教員会議で共有し、そこから授業を改善するようなこともありました。一方、経営学は想像していたよりも、そういう機会が少ないと感じたんですね。
それでも2年くらいは黙って研究を続けたのですが、博士後期課程に上がるときに、「やっぱり自分の問題意識に向き合おう」と決めました。そして現在の仕事に似たようなことをはじめました。
——「距離がある」というのは、具体的にどのような状況なのでしょうか。
例えば、HR分野では日々新しい研究が生まれ、たくさんの論文が発表されています。ところがHRサービスを手がける事業者の中で、これらの論文に目を通している方はあまり多くないと思います。あるいは、実務家と研究者が一緒になってプロダクトを作ったり、人事施策を検討したりするカルチャーもあまり浸透していません。
——いわば、経験と直感に基づいてプロダクトを提供しているということですか。
もちろん、経験と直感が必ずしも悪いというわけではありません。経験と直感が意外と的を射ていることもありますから。ただ、それ一辺倒ではまずいだろうというのは感じていました。
大学院で組織行動論の研究をしていくうち、HR領域では、そもそも研究の知見があまりHRに携わる方々に共有されておらず、それを現場で活用するところまでいっていないという実情が見えてきました。そこで、研究と実務の距離をどうにかして近付けていきたいという思いで、ビジネスリサーチラボを立ち上げました。
あとは、「市場の中に経営学の研究室を作ることはできるだろうか」という問いを持っていました。研究に関わりながら企業から対価をいただく。それが持続可能な形で回せれば、会社になります。こうしたことが本当に可能か、試してみたかったという面もあります。
現在ビジネスリサーチラボは9期目。前身となる事業や会社も含めれば十数年、この活動をやっている状況です。最初の数年は苦労しましたけど(笑)。
というわけで、今回はここまで。次回は、研究者出身の伊達さんから見た日本のHR市場について、ご紹介したいと思います。お楽しみに!
第1回 研究とビジネスの距離を縮めたい(本記事)
第2回 日本のHR市場に必要なこと
第3回 ペアに注目したアセスメントの作り方
思い込みの「常識」を切り捨て採用の本質に迫る、採用担当者必読の一冊
『「最高の人材」が入社する採用の絶対ルール』は、伊達さんが共著者として執筆した本です。エントリーシートは本当に必要か、志望動機はなぜ聞くのか、など従来の「採用の常識」にズバリと切りこんで、新常識を提案しています。刺激的に見えますが、背後にはしっかりとした根拠があり、「確かにそうかもしれない」と納得させられることばかり。採用担当者はもちろんのこと、求職者にもオススメしたい一冊です。
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