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『フェアプレー』彼女の方が優秀だと何故彼氏は認められない?

めちゃくちゃ好きなやつ。
完全なる好みの映画でした!見て良かった!

仲睦まじいカップルが兄(か友達)の婚約パーティーから抜け出してトイレでイチャイチャ。
セックスするのかしら?と思いきや、彼女が生理で二人共服やら顔やらに経血がついて笑い合う。
そんな時に彼氏のポケットから指輪が落ちて…、なんと跪いてプロポーズ。愛してると囁きあう二人…。
彼女をお姫様抱っこして同棲するお家に帰る。
なんて素敵で幸せそうなカップル…。

このオープニングの完全なる反転がラストに来るってのがたまりません。凄まじい。

このカップル、実は証券会社の同僚同士で周りにそのことを黙って働いています。
物語は彼女が昇進して、彼氏が部下になることで動くんですが。
彼女の方が仕事の才能も実力も段違いにあり、彼氏はそれを全く喜べない。

枕営業したのでは?
会社のイメージアップで女性優遇されただけだ。
ボス達に侍らかされてるだけだ。
醜い嫉妬で見るに耐えない姿にどんどん彼がなっていきます。

オープニングの彼があまりにも優しくて素敵で、ほんとに良いカップルだからわりと彼を好意的に見ていたんですけど、
自分が彼女より実力がない事をどうしても認められないその姿、いやーどんどん嫌悪感が…。

彼女は何度も歩み寄ります。
せっかくの昇進を、ごめんなさいと彼に謝ったり、彼にチャンスを与えようと上司にかけあったり。
食事やセックスでなんとか彼との関係を良くしようと、何度も何度も行動するも、彼が自己と向き合ってないから、もうほんと駄目で。

それに忙しすぎる!
夜明け前の4時半?とかに起床って!
んで、NYの証券会社最悪!!!
とんでもない男性社会でハラスメントの横行。
同僚達がストリップに彼女を連れて行って性暴力の話を嬉々として話すシーン。クズすぎ。
そしてそれに染まらないとのし上がれない、やっていけないからその場に馴染もうとする彼女。
そしてその彼女をまた笑い物にするクズ達。
出てくる男が全員クズすぎる。

んで、その会社のボス。
エディ・マーサンという役者さんなんですけど、この方が抜群すぎて、この方見るだけでも満足。
顔は優しい感じなのに、まばたきをせずに相手をじっと見るその姿が、アッ敵わないと思わせる凄みがあって。
もうその表情だけで、このボスは部下がクズだろうが善人だろうが関係なくてただ利益をあげればそれでいいんだと分からせてくる。
しかも凄いのが、金の亡者という訳でもなく、その金すら興味がない、業界で勝つか負けるか、ただそれだけが彼を動かす、みたいな、そんな風に見えるんですよ、そのボスのシーンはそんなにないのに!
いやー、最高の助演でした。
(日本なら中村梅雀さんとか、小日向文世さんとかが合ってる感じかな)

オモロいのが自分と向き合えない彼が変な自己啓発(値段激高)にハマって、また自分から目を逸らすところ。
この映画も「いいから話し合えー!」という映画ではあるんですが、恐らくこの二人話し合っても無駄なんじゃないかと思わせる。
二人の問題ではなく、彼ただひとりの問題だと私は思いました。
何故彼女の実力を認められないのか。
彼女をボスとして働く事に抵抗があるけど、何故その抵抗すら自覚できないのか。
自分の仕事の大ミスを彼女にカバーしてもらってもなお、彼女を認められない。
果ては彼女の足を引っ張る始末。

そしてラストのトイレ…。痺れました。

彼女の母親が勝手に開催した婚約パーティー。
この母親のもとで頑張って今の会社にまで入った彼女はほんとに優秀だし、きっと優秀にならざるをえなかったんだろう…と伺わせます。
で、そこにもうばよえ〜ん状態の彼氏が結婚する気もないのにそこにいる。最悪。
二人は口論の末、トイレで大ぶつかり。

したらカップルあるあるで、めちゃくちゃ喧嘩してたのにキスからの荒々しいセックス。
あらまあ〜と思って見てたんですけど、この映画の違うところは、こっから。
ほんとつらい描写になり、10秒くらい早送りしようかなと思ったんですが。
荒々しいセックスの最中、彼氏が彼女に暴力をふるいます。痛いからやめてって言ってるのにやめない。最初は同意だったのに、明らかに最後はレイプ、暴力として終わり…。
決定的な関係の破綻となりました。
彼氏…、こんな奴だったのか。
恐ろしいのは、この彼氏のような状況になったら、男性なら誰しもこうなる可能性が大いにあるということです。

最後の最後、エンディングで、彼氏は大泣きして俺はどうかしてた、俺はこんな奴じゃない、知ってるよね?と言いますが。
そんな彼に言う彼女の最後の一言!
めっちゃ痺れました。
監督、よくわかってる!

お疲れ様でした!!と彼女に拍手!

いやーほんとに彼女、お疲れ様!!
こんな目にあってほんとに、ほんとに大変だった、つらかった、でもアンタ仕事の才能あるし、いけるよ!まわりも業界もクズだらけだけど!アンタなら行くとこまで行けるよー!
と、大エールを彼女に送ってしまう、何故か最後は変なアドレナリンと彼女への誇りを感じるような、シスターフッド溢れる映画でありました。

その他にも、
電車のホームに入る音やガタンゴトンが不協和音として陰鬱なムードを醸し出していたりと、映画的表現にも満足です。
人の服装にケチつける奴、そいつのなんて哀れな事!というのもよく分かるシーンもあります。

とにかくここまで字数書く程、めちゃくちゃ面白かった!オススメです。

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