大命題「運動しても痩せないのはなぜか?」

はじめに

今日、東京は6月と思えないほど良いお天気で気温も今年最高のようです。
以前も書きましたが、この時期はダイエット希望のお客様からのお問合せが増える季節です。

ダイエットやボディメイクを指導する際にエネルギーバランスをマイナスにすること。

つまり動くことを増やし、食事制限をすることは重要ではあります。
でもそれだけで全ての人が脂肪を落とし、望む体を手に入れ、健康に過ごせるのでしょうか?

いや、脂肪燃焼システムとはそれほど簡単ではありません。

なんと言っても脂肪は備蓄エネルギー。
そして10万年以上かけて、氷河期や飢餓を乗り越えてきた我々や我々の祖先の遺伝子は、脂肪蓄積が上手で省エネであり、だからこそ我々は今も生きながらえているのですから。

そしてどんなにエネルギーバランスをマイナスにしたとしても、肥満などとは全く関係ないと思われる治療のための投薬、環境ホルモンなどによって脂肪を落とすことのできない人も多くいるのが現実です。

そのことを理解することもトレーナーとしてクライアントの希望を達成するために重要な要素。

僕の実話です

僕も以前はエネルギーバランスをマイナスにすれば、ダイエットできると思っていたころがありました。
いや、表面的にはエネルギーバランスをマイナスにしてもダイエットや脂肪燃焼がうまくいかないケースがあることを知っていましたし、それに対応してきたつもりでおました。
ただ自分自身の体の異常から、深くそのことを実感し、多くの学びを得たのです。

それは十年ほど前の話。
10代の頃に脊椎分離になりそれから悩まされている坐骨神経痛が慢性痛になり。
痛みとストレスから体内炎症を起こし、それを抑えるために副腎皮質ホルモンのステロイドの投薬をしました。
それによって痛みは少なくなりましたが、内臓脂肪、そして皮下脂肪が増加。
エネルギーバランスをマイナスにしても、なかなか体重も体脂肪も減らなくなりました。

それこそまさに副腎皮質ホルモン投薬の副作用。

そこでマインドフルネスを取り入れたメンタルフィットネスとエクササイズを組み合わせ、当時両足にあったひどい全身の痛みは減りましたが完全に痛みがなくなったわけではありません。

薬の量もかなり減らし限定的になりましたが、いまだに脂肪を落とすことは以前より難しく感じています。

トレーナーとしてはお客さまがどんな投薬治療をしているのかを理解しておくことは重要ですが、膝を怪我したアスリートの体重減少が難しい時、そのアスリートが膝の炎症を抑えるために使っている薬が体重を落とせない原因になっていることを知らないと、間違ったアドバイスをしてしまうこともあるでしょう。

そのためにまず我々人類が蓄積した脂肪をエネルギーとして燃焼することがいかに難しいのかを知る必要があります。
それを知っているからこそ、対処方法も見えてくるのですから。

今日noteではそのための知識を整理するために必ず役に立つ本をご紹介いたします。


それがこの本です!

『運動しても痩せないのはなぜか: 代謝の最新科学が示す「それでも運動すべき理由」』ハーマン・ポンツァー著

書籍概要

ハーマン・ポンツァー著「運動しても痩せないのはなぜか」は、エネルギーバランスと体重管理についての最新科学を解説した本です。
本書は、単にエネルギー収支の観点だけでは説明できない体重変動の複雑なメカニズムを示し、運動の役割について新たな視点を提供します。
ダイエット指導者やトレーナーにとって、そして全ての「余分な脂肪を減らしたい」と願う人にとって必読の一冊です。

本書の重要なトピック

1. 代謝の柔軟性

・適応性のメカニズム
人間の体はエネルギー消費を調整する能力を持っています。例えば、運動量が増えると体は他の活動のエネルギー消費を減少させることがあります。
これは、長期間のエネルギー不足を避けるための生存メカニズムです。

・体重減少への影響
このメカニズムにより、運動だけでは期待するほど体重が減らない場合があります。
つまり、カロリー消費が増えても、体がその分を補うために他の活動でエネルギーを節約するためです。

2. エネルギー消費の固定モデル

・ハンターガザル部族の研究
ポンツァーの研究は、ハンターガザル部族の調査結果を基にしています。
これらの部族は古代と同じような生活様式で狩猟生活をする部族で、我々とは比べ物にならないほど多くの身体活動を強いられています。
しかし都会の現代人と同様の代謝エネルギー消費を示しており、身体活動レベルが高くてもエネルギー消費が一定の範囲内に収まることが判明しました。

・消費の限界
高い身体活動レベルでも、エネルギー消費が限界に達すると、それ以上の消費が行われないのです。
この現象は、エネルギーバランスが単純なカロリー収支だけでは説明できないことを示唆しています。

3. 運動の健康効果

・運動は意味がないのか?
確かに消費エネルギーを増やす事による消費エネルギーの増加は、一般的にイメージされているより脂肪燃焼やダイエットへの恩恵は少ないのです。
しかしそれ以外の要因から、現代人にとって運動は必須なのです。

・心血管の健康
運動は生命を維持するために絶対的に重要な心血管系をはじめとする代謝・循環系の健康を改善し、心臓病や高血圧のリスクを低減します。

・メンタルヘルス
運動はうつ病や不安症の症状を軽減し、全体的なメンタルヘルスを向上させます。

・炎症の軽減
定期的な運動は慢性的な炎症を減少させ、長寿に寄与します。

・総合的な健康改善
運動は体重減少だけでなく、全身の健康に多くの利益をもたらします。

4.ホルモンと体重管理

・レプチンとインスリン
レプチンやインスリンなどのホルモンは、エネルギーバランスと体重に大きな影響を与えます。これらのホルモンのバランスが崩れると、体重管理が難しくなることがあります。

・ホルモンバランスの重要性
ダイエットや運動だけでなく、ホルモンバランスも考慮する必要があります。
これは特に女性にとって重要です。

5.エネルギーバランスの他の要因

・ストレス
ストレスはコルチゾールの分泌を増加させ、脂肪の蓄積を促進します。

・睡眠
睡眠不足はホルモンバランスを乱し、食欲を増進させるグレリンの分泌を増やします。

・遺伝的要因
遺伝子も体重管理に影響を与えます。家族に肥満の傾向がある場合、ダイエットが難しいことがあります。

代謝の柔軟性とエネルギー消費の調整メカニズム

本書「運動しても痩せないのはなぜか」の中でも特に重要なのが、「代謝の柔軟性」についての概念です。
この部分を理解することは、トレーナーがクライアントに正しいアドバイスを行うために、そしてダイエットしたいのにうまくいかない方がその要因を理解し、正しい方法を知るためにも非常に重要です。

1.代謝の柔軟性とは?

代謝の柔軟性とは、体がエネルギー消費を調整する能力を指します。
人間の体は進化の過程で、エネルギー供給の変動に適応するメカニズムを発展させました。
これにより、運動量が増加しても体重が減らない場合があるのです。

2.代謝の調整メカニズム

運動によって消費されるエネルギーが増えると、体は他の部分でエネルギー消費を減少させることでバランスを取ろうとします。
例えば、激しい運動をすると、その分他の活動(例えば、消化や免疫機能、非運動時の熱産生)でのエネルギー消費が減少することがあります。

3.ハンター・ガザル部族の研究結果

ポンツァーの研究の一環として、狩猟採集生活を送るハンター・ガザル部族のエネルギー消費を調査しました。
この部族は非常に活動的な生活を送っていますが、彼らの総エネルギー消費量は、運動量が少ない現代人とほぼ同じであることが判明しました。
これは、体が高い活動レベルに適応してエネルギー消費を調整しているためです。

4.トレーナーにとってのインパクト

この代謝の柔軟性の理解は、トレーナーがクライアントに対して適切なダイエットと運動指導を行うために不可欠です。
もし、クライアントが「もっと運動すれば痩せる」と思い込み、極端な運動量を増やし続けると、体はその適応メカニズムを働かせ、他の活動のエネルギー消費を減らすことで体重が減らないどころか、逆に健康を損ねる可能性があります。

5.具体例と指導のポイント=Questの場合

・具体例
例えば、クライアントが毎日ジョギングを1時間追加したとします。
この場合、体はそのエネルギー消費を補うために、日常生活の中でのエネルギー消費を減少させることがあります。
また1時間のジョギングによって極端なストレスホルモンの増加を引き起こす可能性が高くなります。
結果として、総エネルギー消費はそれほど増加せず、脂肪は蓄積され、体重も減りにくくなります。

・指導のポイント
「過剰で画一的な運動量の増加を避ける」
過度な運動は逆効果になる可能性があるため、体を騙すような運動強度の上下の変動や体にかかる負荷の種類を変えるなど、アンバランスにすることで結局全体のバランスが取れるようなプランを作成することが大切です。

「総合的なアプローチ」
ダイエットはエネルギー収支だけでなく、睡眠、ストレス管理、栄養バランスなど、多角的な視点からアプローチすることが必要です。
「クライアントからのフィードバックを重要視する」
クライアントの体調やパフォーマンスの変化を定期的に細かくチェックし、プランを調整します。

結論:マインドセットこそが全て!

その際に最も重要なのはクライアントのマインドセットです。

多くのクライアントは今日書いた内容=本書の内容を情報として知りません。
少ない一方的な情報がもたらす無知は、思い込みにつながり、結果が出せないことでよりストレスが増加することになります。

少しずつ、丁寧に、根気よく説明をすることで、クライアントにより良いマインドセットを構築していただくこと。

これこそが全ての良い結果の根幹を成すものです。

そのためにも思い込みや偏った情報、根拠のないポジティブ or ネガティブシンキングは捨てましょう。
まずは知識を得ること。

本書『運動しても痩せないのはなぜか: 代謝の最新科学が示す「それでも運動すべき理由」』はそのためにも絶対におすすめする一冊です!

今日も最後までお読みいただき、ありがとうございます!


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