薬膳プレート

連載『オスカルな女たち』

《 想定外ベクトル 》・・・5

 本当はもうひとつ、つかさには吾郎のことで舵(かじ)に聞きたいことがあったのだが、仮に舵が未だ『吾郎教』だったとしたなら、逆に責め立てられるかもしれないし、もしくはいいように解釈し反撃してくるかもしれないと疑った。
やっと離婚が成立してほっとしているところに、事を荒立てまた一から吾郎とやり取りするのは、今のつかさには心底無理だと思ったのだ。

(ここで舵と揉めたくもないしな…)
 珍しく顔を出してくれた弟の気分を害したくはないし、自分としても久しぶりに弟と和やかに食卓を囲みたい。
おそらく自分のことを心配しての行動だと解るだけに、今はこの時間を大事にしたいと思うのだった。ゆえにつかさは、小さく息を吐いて気を落ち着かせ、言葉を選んで最小限のことだけを伝えた。

「吾郎がいつから用意してたのか知らないけど、あたしはずいぶん前から、吾郎に破られ続けてきたの…」
 と、悲惨な離婚届の末路を述べる。
「破る? 吾郎さんが? まぢ…?」
(ほらね、やっぱり知らない…)
 だから余計なことは言えない。
「つい最近までね。どこでどう気分が変わったのかは知らないけど、自分から持ってきたのはこないだが初めてよ…おかげさまで、滞りなく処理できたけど」
 ご飯茶碗をふたつ手にし、舵と向かい合わせで席に着く。

いつもお読みいただきありがとうございます とにかく今は、やり遂げることを目標にしています ご意見、ご感想などいただけましたら幸いです