オレンジの花

連載『オスカルな女たち』

《 新しい風 》・・・11

「そんな顔しない。もともと考えていたんだって…。車があるっていっても、これから仕事を増やすつもりでいたから、もっと職場に近いところに越そうって。ただ、吾郎がいるうちはあたしが家を離れるわけにはいかないじゃない?」
 吾郎がこの家をどうにかするとまでは思ってはいないが、万が一ということもある。
 つかさはそれを懸念していた。

「なんかごめん、オレ…」
 追い出すみたいで…という言葉を飲み込む継(つぐ)。
「謝ることなんかないわ。いいのよ。言ってくれてよかったよ。いずれちゃんと話さないといけないことだったしね」
(あたしも、踏ん切りつけるきっかけになる…)

 離婚届のストックもなくなったことだし、いい加減決着をつける時が来たのだと改めて心に強く思うつかさだった。
 その様子が継には沈んでいるように見えたのか、
「すぐって話じゃないんだ」
 と、慌てて言いなす。

「それはこっちも同じよ。…これから先のこと、ちゃんと考えないとね」
 そう言ってつかさは、継の背中を軽く叩いた。
(そう、慎重に、ね…)
 風向きはいつも同じではないのだ。

 これが追い風なのか向かい風なのかは判らないが、とにかく新しい風が吹き始めたことは確かだった。


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