羊

連載『オスカルな女たち』

《 悩める子羊 》・・・9

「イメージも人それぞれよ」
「都合いいな。さすがお嬢」
「関係ないじゃない、境遇は」
 そんな中、
「あたしは…『必要とされる女』になりたいな…」
 ふと、思い出したように本音を吐く織瀬(おりせ)に、3人の笑みがやんだ。

「必要とされてないわけじゃないでしょ…」
 つかさは優しく肩を抱き寄せた。そうされながら織瀬は、頭の中では夫である幸(ゆき)のことを考えながら、無意識に視線の端に真田の姿を捉えていた。
「実際、『必要とされる女』って、どんなのを言うのかな」
 つかさにもたれながら織瀬が疑問を投げかける。
「そうねぇ…ひとことで『必要とされる』って言ってもねぇ、どんな場面でのことを言っているのかしらね」
そういう意味では、自身も決してそちら側の女ではなかった…と、腕を解いてつかさが言う。
「マコの取材の件に関していえば、きっと〈仕事〉に関してのことなんだろうけど。織瀬やつかさが言うのは、女としてってことでしょ?」
「うん」
「難しいわね」
「誰しも、いろんな場面で『必要とされている』んでしょうけど…」
 言いながらも答えが見つからないといった様子のつかさ。
「あたしらには、必要だよ。織瀬もつかさも!」
 今いちばん欲しい言葉を、真実(まこと)が言ったような気がした。

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