連載『オスカルな女たち』
《 織姫と彦星 》・・・5
「え…」
「だめ?」
ちらと、視線をあげるが、顔を見てしまうとより一層胸が痛くなる。
「だめ。…じゃ、ないです。けど、」
あからさまに照れているのが解った。しかし、
「けど? そこで困らないでよ…?」
軽く睨むように頭をあげた。
「いえ。困ってはいません」
視線を逸らす真田。
(赤くなってる…)
そう思うと、途端に恥ずかしくなり、織瀬(おりせ)も再び顔を伏せた。
(音楽って、こういう時大事なんだわ…ものすごく、気まずい)
そんなことを考えながら、胸の高鳴りが耳の奥まで響く感じに織瀬は酔っていた。
「メリークリスマス」
そういって真田が沈黙を破り、自分のグラスを傾けてきた。
「メリークリスマス」
ほっとして、グラスを持ち上げる織瀬。
少しの沈黙のあと、織瀬は真田を見上げ、
「離婚届、出してきた」
静かにそう言った。
「そう、ですか…」
「わざわざ報告することでもなかった…?」
結局織瀬は、幸(ゆき)に会わず仕舞いで、ひとりで区役所へ行ったのだった。
「いえ…」
(…嬉しい?)
そう問いたい気持ちを我慢する。
*初めから読み返したい方はこちらからどうぞ( *´艸`)
いつもお読みいただきありがとうございます とにかく今は、やり遂げることを目標にしています ご意見、ご感想などいただけましたら幸いです