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連載『オスカルな女たち』
《 スパイス 》・・・1
「それじゃぁ…このまま話を進めていいのね?」
玲(あきら)は机の上の資料からいくつかを抜粋しながら、ソファに腰掛けるつかさをちらりと見て言った。
「うん。お願いします」
膝の上に手をつき、恭しく上半身を倒すつかさ。
吾郎から受け取った貯金通帳の謎が解けてから、つかさは玲の店に頻繁に出入りするようになった。いよいよ経営者として『トリマーサロン』を出店する決心がついたのだ。
「OK! じゃぁ始めましょう」
言いながら玲は店舗の見取り図をつかさの前に広げ、ソファに腰掛けた。
「今日は、事務のコいないの?」
つかさが奥を覗き込むようなしぐさを見せる。いつも満面の笑みでいそいそとお茶を運んでくる事務員〈小森綾香〉を使いに出していたからだが、いないとそれはそれで味気ないと感じてしまうからおもしろい。
「えぇ…。あなたが来るって言ったらえらく張り切っちゃって…。だから、隣町の支店に資料を取りに行ってもらっているの。あなたに必要なものだ、って言ってね。もちろん嘘だけど」
少し呆れ気味に答える玲に、
「あら、随分とあたし待遇がいいわね」
そう言っていたずらに微笑むつかさ。あとで悔しがる綾香の顔が目に浮かぶというものだ。
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