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連載『オスカルな女たち』

《 母か、女か、》・・・14

「ごめんなさい。知らなかったとはいえ、私はあなたを追い詰めていたのね…」
 後日呼び出された喫茶店の片隅で「あなたは聞きたくないだろうけど」…そう前置きをして頼子(よりこ)は織瀬(おりせ)の顔を見ずにぽつりぽつりと語り始めた。

「私が夫に愛されたのは、幸(ゆき)ができた時…。そのたった一度だけだった」

 衝撃だった。
「え…」
 幸は、ハネムーンベイビーだと聞いたことがある。
 そのあまりのうれしさから、そのときのしあわせを一生忘れないように…と、「幸(ゆき)」と名付けたのだと以前頼子が言っていたことを思い出す。
 そりゃぁ忘れたくはなかっただろう、この世でたった一度、たった一夜限りの奇跡の瞬間の賜物だったのだから。
「年齢も年齢だったし…」
 義父とのことはどういういきさつか詳しくは聞いてはいないが、義母は3人目の妻で、年齢も24歳と結構な歳の差婚であった。22歳で嫁いだ義母だったが、たった一度のハネムーンでの営みが最初で最後の女の夜だったというのだ。

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