スパイス

連載『オスカルな女たち』

《 スパイス 》・・・4

「へぇ…。1階のフロア、結構広いのね…」
 マンションの見取り図を眺めながら、自分が今勤めている店舗との違いを脳裏に描くつか最終的には。
「あぁそうね、確かに。はじめは飲食店を考えていたから…仕切りがあるのもそのためよ。トリマーサロンにしては広いかしら。でもペットホテルもできるようにすればそうでもないかも…?」
「ペットホテルか…できなくはないけど」
「いっそのこと隠し階段でも作って2階と行き来できるようにしちゃう? ちょうど2階は店舗の上が空いてるから」
 確かに…とつかさは少し考え、
「なるべく余計な工事は避けたいんだ…予算も限りないわけじゃないし」
 と付け加えた。
「もしくは、この仕切りの部分を半分にして…ちょっとしたカフェスペースを設けるとか、ね」
「あ、いいかも。中にはトリミングじゃなく、爪きりとかちょっとした手入れのお客さんもいるだろうし。今のお店だと、狭いからそういうお客さんもみんな外に出てもらってるんだよね…」
 そこがちょっとね…と、今いる店の混雑した店内の様子を語る。今の店舗の不便さを全部改善できたなら良いサロンが作れるだろうと。
「なら、いいじゃない。おやつやおもちゃの小物販売でもいいしね」
 いろいろ広がるわね…と微笑む玲(あきら)。久しぶりに自分が携わる仕事だけに、楽しくてしょうがないといった様子だ。

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