連載『オスカルな女たち』
《 すったもんだで 》・・・18
「いい加減にして!」
羽子(わこ)の病室の前に来たところで振り返り、その反動でたまらずピシャリと裏手を返す玲(あきら)。
すると、タイミングよくドアが開き、
「え…。ママ?」
(は…)
翻した右手を口元に、玲は更にその手を左手で抑え込んだ。
「あ、違うの…」
言い訳をしようにも適当な言葉が浮かんでこない。だが気まずい玲とは裏腹に、がっしりと羽子がその胸にしがみついてきた。
「ママ…!」
「あら…?」
(結果オーライ?)
好転…と、確信した玲が安堵した途端、
「どうしたの? 羽子ちゃん、気分悪いの…!?」
その体を引きはがして、ボディチェックよろしく泰英(やすひで)がおろおろしだす。
「やだ、パパ。平気…?」
「もう~羽子ちゃん。『入院した』なんていうから~」
鼻水をたらしたぐちゃぐちゃな顔で羽子に迫る。
「ちょっと、パパ。鼻水…」
「あぁ、ごめんよ…」
「とにかく中に…」
羽子の病室はいちばん奥で、向かい側にはガラス張りの食堂が位置していた。にわかに騒がしくなった病室を、食堂にいた看護師が訝しんで出てくるところだった。
「どうしました?」
「あぁ、すみません。ちょっと、夫が取り乱しまして…」
おほほほほほ・・・・
愛想笑いをして無理矢理ドアを閉める玲。
*初めから読み返したい方はこちらからどうぞ( *´艸`)
いつもお読みいただきありがとうございます とにかく今は、やり遂げることを目標にしています ご意見、ご感想などいただけましたら幸いです