羊

連載『オスカルな女たち』

《 悩める子羊 》・・・1

「できる女といえば…やっぱり、自分だけが際立たないってところよね。周りも盛り立てて且つ、功績を認められる技量が備わってるってことじゃないかしら…?」
 神妙な面持ちでビールジョッキを握ったままの真実(まこと)の顔を覗き込む玲(あきら)。久しぶりに参加の女子会はそんな重苦しい空気で始まった。

「え? なになに? 今日はなにがテーマなわけ?」
 いつものバー『kyss(シュス)』で、あとから合流した織瀬(おりせ)とつかさがテーブルに着いた時のことだ。
「なんかね、『できる女、必要とされる女』特集の取材ですって」
 それに伴う資料…とでもいうように目線を下に流し、苦虫を潰したような真実の代わりにそう玲が答えた。
「なに~? どこの取材? 特集って雑誌かなにかなわけ?」
 先に手渡されたおしぼりを受け取りながら、丸テーブルをいつものように囲み、その資料に手を伸ばしてつかさが続く。

「ほら、『open』っていう隔月の女性雑誌知ってるかしら。女の開放をコンセプトとして〈自由な時間〉〈自由な人間〉〈自由なお金〉を手に入れるためのバイブルっていう…」
「知ってる、知ってる」
「あぁ、毎回女優や女流作家とかが表紙になってる? ファッション誌ってわけじゃないけど地味に人気な雑誌よね…?」
 絶妙な回答をするつかさは、実は購読者だったりする。
「それよ。その雑誌の特集記事のインタビューですって」
 言いながら真実をチラ見する。
「インタビュー? へぇ~すごいじゃん」
 答えながらカウンターに手を挙げ、店員を呼ぶ織瀬。

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