花茶

連載『オスカルな女たち』

《 ブレインストーム 》・・・19

「言えませんよ。言えるわけないじゃないですか。あなたのために日々を過ごす明日香さんが、あなたの負担になるようなことできるわけない。いつでもあなたが暮らしやすいよう、働きやすいよう、それしか考えていない明日香さんが、不満を言えるわけがない。そしてあなたはそれに甘えてた。だから余計に言えなくなった、そういうことじゃないんですか」
 織瀬(おりせ)は少々熱が入りすぎたようだ。
「ぁの…おりせさん…?」
女は単純だけれど、そんなに簡単じゃありません!
「織瀬さん!」
「はっ。・・・・すみません、あたし…」
 今度は織瀬が頬を紅潮させた。
「違うんですの…織瀬さん。ありがとうございます…そんな風に、私の言いたいことを言ってくださって、ほんとうにありがとう」
 そう言って明日香は、涙を人差し指と中指の腹で静かにぬぐった。

「聖(ひじり)さま…。ほんとう、ですの?」
 明日香は居住まいを正して聖に向き直る。
「え…」
 警戒の目を向ける聖。
「感謝してるって、本当ですの?」
「ぁ、あぁ、本当だとも。あたりまえじゃないか」
 ほっとして顔を歪める。
「私、嬉しいですわ」
 未だ恋する乙女のように、明日香はそう言って頬を両手で支えるようにして小さく微笑んだ。

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