なつめ

連載『オスカルな女たち』

《イヴの憂鬱》・・・7

「…今、なんて言ったの?」
 ドッグ・カフェではテラス席に案内されたふたり。突然の告白に絡めとったパスタがつかさのフォークから流れ落ちる。

「え。だから…『旅行に行きませんか』って言われたのよ。あのバーテン君に」
 背の高い子犬用の餌台付きの椅子に飾り物のように座らされたちょき(ん)を見ながら、誤魔化すように、それとなくなんでもなさそうに語る織瀬(おりせ)。
 だが、その表情が内心穏やかではないことは容易に見て取れた。

「いきなり旅行? そこはまずデートじゃないの? それ泊まり?」
 真顔で織瀬を見る。
「わかんないけど…。今さら外で会うのにカッコつけてもなんだから、旅行にいきましょうよ、って」

「目的ははっきりしてるって言いたいわけね…」
「どうなんだろ…」
 肩をすくめて見せる織瀬。

「こないだから、爆弾発言ね、彼」
 ひとまず水を口にして落ち着こうとする。が、
「で、なんて答えたの?」
 間髪入れずに質問する。

「なにも…。いきなりだったし、なんて言っていいか判らないから黙って帰ってきた」
 そう言ってゆっくりと〈たらことイカのスパゲッティ〉を口に運ぶ織瀬。

いつもお読みいただきありがとうございます とにかく今は、やり遂げることを目標にしています ご意見、ご感想などいただけましたら幸いです