連載『オスカルな女たち』
《 秘密の効用 》・・・11
「鈍いにもほどがありますよ、織瀬(おりせ)さん」
「そんな…そんなことない…!」
(なんなの? 誤解されたかったの? されたくないの? 誤解どころか、こっちはすっかりその気になってる自分が恥ずかしくなっただけよ…!)
いつの間にか真田の気持ちに自惚れていた。そんな自分を悟られてしまったのではないかと焦り、そんな醜態をさらせないと必死だっただけだ。だが、そうと素直に白状するわけにもいかない。
「じゃぁ、なぜ帰ったんですか? なんでもなかったのなら、店に来ればよかったじゃないですか。少なからずオレの態度に頭に来たから帰ったんじゃないですか?」
「ぅ…。そういうわけじゃなくて…」
なんでもないわけがない。
(なんでこんな…気まずい思いしなきゃならないの…)
シクシクと胃が痛む。
「でも彼女…あなたのこと、呼び捨てにしてた」
長い付き合いのつかさならともかく…と、思わず心の声が漏れてしまった。
「それは、彼女は誰にでもそうなんです。やめろって言ってるんですが、それをすることがかっこいいと思ってるらしくて…」
真田にとっては別段、特別な意味もないらしい。だが、
(ホントかしら…)
横目で顔色を窺ってしまう。
「疑ってますよね?」
「べつに…」
「女の人の『べつに』が別にだったためしはありませんよ」
どこかで聞いたことのあるようなセリフ。
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