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連載『オスカルな女たち』

《 いちばんいい? 》・・・9

その週の木曜、休診日・・・・。
「失礼、しま~す」
 恐る恐る診察室のドアの隙間から覗き込んできたのは、このところ足しげく見舞いに通ってきている織瀬(おりせ)だった。
「あら、織瀬さん。さぁ入って」
 振り返る患者は特別患者の女優〈弥生すみれ〉こと、かつての同級生『観劇のオスカル』と呼ばれた〈花村弥生子(やえこ)〉だ。いつものように「順調よ」と笑顔で答え、主のごとく出迎る。
「まるで自分の家だな…」
 真実(まこと)は憎まれ口を叩くも、
「診察は終わったから、」
 いいよ…と立ち上がり、織瀬を受け入れる。
「それじゃぁ…」
 そう言ってようやくドアを押し開ける織瀬。
「ごめんなさい。遅くなっちゃって…」
「いいのよ。毎回エコー検査見ててもつまらないでしょ」
 回転椅子を揺らしながら答える弥生子。
「あんたが言うなよ」
 入口脇に立てかけてある折り畳み椅子を素早く差し出す真実。
「…仕事は? この時期忙しいだろ?」
「うん。今はイベント外してもらってるんだ」
「そうか…」
腰を下ろす織瀬とデスクに戻る真実の一連の流れを眺めながら、
「真実さんて、」
 と、言葉を飲み込む弥生子。

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