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連載『オスカルな女たち』

《 トレース 》・・・4


「お正月明けには…いいえ、年末には必ず時間を作らせるから。問題を抱えたまま年越しなんてあり得ないわ」
 それは羽子(わこ)の問題だけではなかった。
 言い訳じみていて実に格好が悪いことではあるが、夫のご機嫌斜めなことには、自分にも要因があると思うからこそ玲は焦れているのだ。
 それは〈結婚10周年〉の記念にとプレゼントされた例の〈赤い部屋〉を、夫になにも告げず勝手に解体したことへの怒りが収まらないことにある。さらに今回の娘の妊娠騒動でつけ入る隙が無いのだ。だが、それをそれとして羽子に告げるわけにもいかない玲だった。
(なんとかして機嫌を直してもらわないと…)

「説得できるの?」
「あなたにも、条件は出すわよ」
「なんでよ?」
「とにかく高校は卒業してもらうわよ。辞められるなんて思ったら大間違いですからね」
「え~、意味ないのに…」
 そこは本音では無駄だと思っていた。だが、もっともらしい条件を飲まなければそうそう納得させられるわけがない。だが、
「意味はあるわ。将来あなたがベビーのために後悔しないようにね」
 玲(あきら)自身、学生時代に身が入らなかったことを思えば、それも当然と思えた。

初めから読み返したい方はこちらからどうぞ( *´艸`)

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