見出し画像

連載『オスカルな女たち』

《 そうするための… 》・・・12

「赤ん坊だってひとりの人間だ。どんな事情があろうとも、その個人の将来を母親がいないというだけで決めていいもんかね。だからそんな子どもがひとりでも母親と一緒にいれるよう〈産科〉を作った。そして〈里親〉のあっせんもした。まぁ当時はいろいろ言われたけどね。だから公にはしていない」
 そう言って操(みさお)は織瀬(おりせ)をまっすぐに見た。
「そうだったんですね…」
 純粋に「母子」という関係を大事にしたかったのだ…と操は言う。
「きれいごとかもしれないけどね、自分は子どもを『諦める母親』にはなりたくなかった…ってことかね。弟のような子が、この先なん人やってくるのか解らないけど、そういう子らの母親でありたいと思った」
 言いながら操は自分の胸を叩き、
「自分は捨てられたのではなく、この『あたしに』望まれて生まれてきた子なんだって…。だから、自分で産む必要はなかったんだよ」
 そう語る操の表情は実に穏やかで「子どもは生まれる場所を選んでやってくる」と、我が子である真実(まこと)に教え聞かせた心意が見えた気がした。
「わたしに…!」
「うん…?」
 織瀬は息をのみ、
「わたしも、なれるでしょうか…」
 鼻をつまらせ、涙をこらえながら言葉を吐き出した。

いつもお読みいただきありがとうございます とにかく今は、やり遂げることを目標にしています ご意見、ご感想などいただけましたら幸いです