連載『オスカルな女たち』
《 過去からの手紙 》・・・12
〈これから仕事じゃないの?〉
言い終えて初めて、真田が私服であることに気づいた。
〈いえ、今日は休みだってんで…〉
(仕事じゃ、なかった…?)
それではやはり、ふたりはプライベートで会っていたということか。
〈あとで必ず連絡入れるから…〉
〈…解りました〉
憔悴しきった様子できびすを返す真田の背中に、
〈それと。…解ってると思うけど、一緒にいたことは伏せといて。もともと口外するつもりもなかっただろうけど〉
と付け加えた。
真田はただ黙って受け入れ、深々と頭を下げて去って行った。
ほどなくして診察室に呼ばれると、カーテンの向こうに力なく横たわり点滴を受ける織瀬(おりせ)の姿があった。
(顔、真っ白…)
一瞬たじろぐが、すぐに気を取り直し声を掛ける。
〈大丈夫?〉
〈つかさ…。ごめん、ね〉
〈いいよ、大丈夫。旦那さんに連絡は…?〉
そういうと織瀬は、一瞬はっとしたような顔をして「今日は出張で帰りが解らない…」とだけ答えた。
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