連載『オスカルな女たち』
《 すったもんだで 》・・・20
「とりあえず今は落ち着いているわ。詳しいことは帰り道で話すとして…今日はもう、休ませてあげましょう」
早々にその場を切り上げたい玲(あきら)は早口で、
「それじゃぁ、羽子(わこ)。また明日くるわね」
そう言い残し、泰英(やすひで)の背を出口に返して外に促した。
「な…なんだよ。まだ話が」
物足りない泰英は名残惜しそうに羽子を振り返る。
「とにかく、お大事に…」
言い終わらないうちに廊下に押し出し、さっさと階段の方に追いやる玲。
「ちょ、ちょっと、あきらちゃん。どうしたの」
合点の行かない泰英を、玲は仰ぎ見、
「あなた、車でいらした?」
鞭を放つときと同じ厳しい目つきでそう言った。
「あ、あぁ。急いでいたから自分できたけど…」
その言葉に「にやり」といい顔をして見せ、そしてそうする玲の行動に泰英もまた、その考えを瞬時に悟ったようで、真面目な顔つきで足早に階段を下りた。
「仕事は?」
あとから追いかけてくる玲の声に、
「そんなこと言ってる場合じゃないだろう」
なにを急ぐことがあるのかふたりは、我先に…と言わんばかりにてきぱきとスリッパを脱ぎ捨て、どちらともなく差し出した手を繋いで玄関を後にした。
*初めから読み返したい方はこちらからどうぞ( *´艸`)
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