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連載『オスカルな女たち』

《 大切な・・・・ 》・・・8

「もうあたしなんかいらないって感じ…?」
 閉じたドアを眺め、机に頬杖を突く真実(まこと)。だが、すぐに舌打ちして席を立つ。すると、再び扉がノックされ、
「なんか忘れ物?」
 今出て行った織瀬(おりせ)が戻ったものと思って振り返る。
「いや…。ねぇと思うけど」
 そう言って入口から声を返したのは、
「佑介…? どっから入った!?」
 突然の予期せぬ訪問に慌てて椅子を倒しそうになる。
「どこって、玄関だろ」
 構わずに中に侵入してくる佑介は、
「そうじゃないっ…だれが入れた。勝手に入ってくんなよ!」
「今まで、操(みさお)先生のところにいたんだ。なんか騒がしかったし、そのあとは客が来てるっていうから、遠慮してたんだけど…今の、患者?」
 たった今まで織瀬が座っていた患者用のいすに腰掛ける。
「勝手に座るな!」
「別にいいじゃん、だれもいないし」
「だれもいないから言ってんだよ!」
「なんだよ、ひとを侵入者みたいに」
「充分侵入者だろ」
(だいたい最近、出没しすぎだろ…!)
「座れよ。話があんだ」
 まるで立場が逆だ。
「あたしはないよ」
「いいから」
 いつになく真剣なまなざしで真実を見据える佑介。
(操先生といっしょにいた?)
「なんでお袋さんと…」
 身構える体制を崩し、我に返る。

いつもお読みいただきありがとうございます とにかく今は、やり遂げることを目標にしています ご意見、ご感想などいただけましたら幸いです