バラ風呂

連載『オスカルな女たち』

《 水曜日。家出。》・・・12

一通り見渡してシャワー後、分厚いバスローブをまとったふたりは、広すぎるベッドにシャンパンと〈フルーツの盛り合わせ〉を持ち込み、枕を背に並んで腰かけた。

「それで…。ホントのところはどうだったの…」
 小分けにされたぶどうの房を丸ごと口に頬張る真実(まこと)。ぶどうの実だけを器用に嚙みくだし、軸だけを皿に放る。
「なにがよ?」
「あちらの女子会だよ」
「なによ、今さら。マコが気にすること?」
「いいじゃん、減るもんじゃあるまいし…」
「それはそうだけど…」
 静かにシャンパンを飲みながら、玲(あきら)は少し考える仕草をした。

「ホントにお家の一大事な話だったわけじゃないだろ…?」
 甘いな…そんなことを言いながら、こちらは水のようにシャンパンを喉に流し込んで行く。
「一部を取っては一大事よ、きっと。…なぜ気にするの?」
「べつに」
「あなたの『べつに』はいつも全然『べつに』だったことがないわ。なにかあったのね」
「なにも」
「なによ。私じゃ話にならないって言いたいの?」
「そんなんじゃないよ。ただ…」
 ただ…そう言いかけて言葉を飲み込んだ。
 シャンパンを注ぎながら、どこか違うところに意識があるような真実に、玲は追及することを諦めぽつぽつと話を始めた。

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