初心にかえること〜リンゴの絵を描いてみて
机の上に置かれたリンゴの模型と向かい合う中、
「とりあえず、ざっくり書いてみましょうか」
そんな先生の一言から最初のレッスンはスタートしました。しかしそんなことを言われても、どこから取り掛かればいいのか、変な考えが頭をよぎるだけで中々手が進みません。
画用紙の上に絵を描くことなど中学校のスケッチ大会以来で、鉛筆を持つことも久しぶりです。
私が絵を描くとなると上のようなリンゴになってしまい、対象を見て描くのではなく、想像上にあるりんごを元に描かれています。
「新しく何かを学んでみる」をテーマに通い始めたのがデッサン教室です。
どうやら絵が苦手と言われている人の大半は対象を見ずに想像上のものを描く傾向にあると言います。まずは対象をじっくり見て、いきなり綺麗に描こうとしないことが大事ということでした。
まずは細かいことを気にせずにスタートを切ること。そんなの分かっていても手が進まないもどかしさの葛藤が少々続きます。
ようやく輪郭をざっくり描くと、まさにタイトル画像のいつものリンゴ状態になってしまいます。しかしここで先生の助言があり、どのようにリンゴが構成されているのか、光がどのように当たって陰陽がついているのか、そういった部分に目を向けることで少しずつ見え方が変わってきます。
ちょっとずつ修正を加えては消す、色んな角度から線を入れることで陰陽をつけていく、今まで知らなかった事実に、絵を描く人なら当たり前という事実にたびたび感心するばかりでした。
鉛筆だけで本当に立体感を出せるのだろうか、少しずつ分かってきたとは言っても、疑問を残りながら描き進めいきます。
ここはもう少し濃くしたほうがいいだろうと1箇所に集中していると次第に濃さが増していい感じじゃないかなと思えてきた時、先生からの助言が入ります。
一点に意識がいきすぎて、確かにそこの部分には変化は見られたものの、全体的な構成のバランスが崩れていることに気づいていませんでした。逆に全然色の濃さに変化が見られないように感じてる時も全体的な視点で見ること、角度を変えてみることで、ちょうどいい陰陽のバランスが取れているのに気づくことができました。
この場合私が素人ということもありますが、他の慣れた分野でも一点に意識が向けられすぎると他人からフィードバックやアドバイスをもらうまで全体のバランスの崩れに気づいけない時があります。
ランニングの練習でも同じく、一つの練習を強調しすぎて全体の流れを損なうことは頻繁に起こります。
何かが大事と言われれば、このトレーニングがいいと聞けば、ある一点に集中が向けられて、各トレーニング、生活との調和が取らずにいい結果につながらない経験は幾度としました。
「今日の練習はこのくらいでいいよ」と言われて練習のバランスを見直すことと、一度手の動きを止めて、絵のバランスを色んな角度から見直すことは似ているように感じました。
また物のクオリティとはありのままでその対象を見ることで、自分の先入観「これはこういう物だという」考えを加えるほどにそのクオリティは衰えるといわれます。
指導を行うと無意識的に「この選手はこうだから」など決めつけた先入観を抱くようになり、あたかも相手のことを分かった気になりがちです。おそらくそういった要素がその選手から新たな部分を見つけることに歯止めをかけているのだと思います。
何回も何回も、意味があるのかよく分からない線を書き加えていくことで、一つの線が積み重なり、徐々に形になっていくリンゴの絵。
「絵のセンスがない」そんな言い訳がどことなく自分の中にありました。だから自分は絵が下手なんだと。
少々やったくらいで何か語れることはありません。ただ一つ言えるのは基礎も知らず、練習したことないのだから下手なのは当たり前ということで、才能を語るなら少なくともじっくり練習を積んだその後だと言うことです。
これはランニングの指導をやっていてもそうですが、体力がない人、足が遅い人の根本的な原因は「運動習慣がない」、「練習をやっていない」ことです。
誰でも練習すればプロのレベルになれるとかそういうことではなく、私もプロの画家を目指すとか思ってませんし、慣れるとも思っていません。ただ今よりも上達はできるということで、そしてそれは自分が思っている以上だと思います。
「初心にかえる」ある程度経験を積んだ人が使う言葉ではあると思います。私も使ったことはあります。しかし長年経験を積んだ分野で、初めたばかりの気持ちを思い出すのは容易ではありません。
自分がよく知らない分野を学んでみると、この「初心にかえる」という言葉が当てはまり、新しく学ぶ姿勢を教えてくれます。
大人になると自分でその場を用意しないと忘れしまう新しく学ぶということ。初心に帰りたければ自分のよく知らない新しいことを学んでみるのがいいと思います。
新しく何かを学んでみることで得られるのは、「自分は学んで成長できる」を学べるということです。
日常からの学び、ランニング情報を伝えていきたいと思います。次の活動を広げるためにいいなと思った方サポートいただけるとありがたいです。。