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ランニングクリニックを通して学んだこと①

世田谷 246 ハーフマラソン公式サポートイベント フォロー クリニックの名称のもと、大蔵陸上競技場にて第10回編成の練習プログラムを行いました。(期間は1月20日から3月24日の毎週金曜日)

私自身も初めての取り組みでどのようにリードしていくかは悩みました。
参加者のレベルにも差があり、またこの期間中に全員が同じ大会に向かって練習をしているわけではありません。学生や実業団選手、パーソナル指導を行う人など普段の関わりがある中での指導とはまた異なった状況です。


そこでプログラムを考える上で以下のことを大切にしました。

・色んなタイプの練習を経験する

・タイムトライアルをもとに練習のペース設定を考えれるようにする

・練習の負荷のあげ方を理解する


第1回目:4000mペース走+800m

理由としては参加者の現在の走力が分からないため走力チェックです。しっかり一定ペースで走ることができているか、ペースが速すぎたり、遅すぎたりしてないかの確認をするためにペース走の後に800mを設定してペースの変化を見ました。

自重しがちな人は後半にペースを上げていき、800mのペースが4000mのペース走よりも格段に速くなり、逆にペース走を頑張りすぎる人はそこで力を使いすぎて800mのペースが上がらなかったりと傾向は様々でした。

やはりトレーニングを組む上で個人の傾向を知っておくことは重要だと思います。

相手の状況が分からないで、「この練習があの練習がいい」など具体的なことを言うことはできません。


第2回目:200m×10本 休憩2分


理由はスピードのチェックです。前回がペース配分、大まかなスタミナを把握したので今回はどのくらいスピードを出せるのかを重点に置きました。

休憩は参加者によって疾走時間の2~3倍の長さになります。

慣れない練習でどのくらいのペースで行けばいいのか分からず、少し困惑する様子が見受けられました。

「速いペースですが、全力疾走ではないです」スタート前にこんな言葉だけかけていざスタートです。

先を考えて少し怖がったのもあるのか、また「全力疾走ではないです」の掛け声が裏目に出田のか、全体的にペースを抑えすぎている傾向でした。

半分近くが終わる頃にはみなさんこれはもっとペースを上げてもいいかなと考えたのか次第にペースが上がり始めます。

上がる人は最後が1本目よりも8秒近く違ったりしました。ラスト1本を特別視しなくていいと伝えても、やはりラストは自然と気合いが入るのかみなさんペースがさらに一段と速くなります。

「ペースを抑えましょう、頑張ってあげましょう」

ペースを抑えて無理しないように声をかけることで適切なペースに落ち着く人もいれば、落としすぎる人もいます。逆にもう少しペースを上げましょうと言えば極端に上がる人もいるためどのような掛け声が有効かはその時々で考えるしかないことを改めて感じました。

また前回のペース走の走りをみた感じではスピードが上がらないように見えた人も思った以上のスピードが出ているなど驚きはありました。

練習後に「このような練習がマラソンに役に立つのですか?このような練習をやるよりは1kmとかのインターバル走が役に立つのでは?」という質問を受けました。

どんなに200mを頑張っても200mのタイムは全然上がらないので意味を感じないと思ったようです。これは難しい質問で確かに200mのタイムが上がったからマラソンのタイムも上がるわけではありません。(また今日の練習は200mのタイムを上げる目的の練習ではありません)

マラソンへの直接的な効果を考えるならロング走や長めのインターバル走の方が効果的でしょう。しかし200mのタイムが上がらずとも、このような練習をやったことでいつもの1kmや2kmまたはペース走のペースに余裕がでて同じペースのまま本数を増やせたり、距離を延ばせたりと繋がります。その結果としてマラソンのタイム向上は考えられます。
練習を何事も目的のレースとの直接的な繋がりだけで考えると同じパターンの練習にハマりやすくなるのかもしれません。それぞれの練習が相互しあっているのを考えると、一見関係のないようなスピードの練習も間接的にいい影響を与えることはあります。

どのように目的を伝えるのか、毎回考えさせられいい勉強になった日でした。


第3回目:300m×10本 休憩100m

理由はインターバル走でも目的の違いがあることを理解してもらうことです。

前回はスピードに対して今回は心肺への負荷を重視しています。

一見すると200mと300mのインターバル走と似ていますが、止まって休憩するかゆっくり走るかの違いがあります。また前回は短い距離に対して休憩時間は長く、今回は距離は長くなり休憩は短くなっています。

前回は息が整ってからスタートしたのに対し、今回は呼吸が整う前にまた次を走り出します。それにより心肺に負荷をかける時間を長くすることが大事です。

こうなるとインターバル走といっても目的は異なります。

主にインターバル走を分解すると以下の4つに分けることができます。

疾走距離 本数 休憩時間 ペース

これらの要素に変更を加えることで目的の負荷を調整します。

インターバル走=きつい練習と考えている人もいますが、アイディア次第ではきつくもできるし、楽にもできます。

ペース配分を間違えればペースが一本ごとに落ちていき非常に苦しい練習となってしまいます。

「前回の200mよりはゆっくり、初回のペース走よりは速くです。300mの後にスムーズにジョグができる余裕度で走りましょう。」このように声をかけてスタートしました。

また大まかなタイムも各個人に伝えておきました。

タイムを伝えたことで100m毎に時計をチェックしペースを合わせようとする人、休憩のジョグのペースが速すぎてメインの300mのペースとあまり変化がない人、300mのペースが速すぎてジョグができなくなる人など反応は様々でした。

とにかく設定タイムに合わせることに必死になる心境は分かります。設定タイムは正しく用いることができれば

負荷をかける指標として役立ちます。しかしまだ走力が定かでない時に設定してしまうと逆効果になることもあります。練習本来の目的がズレてしまうことです。今回はこのタイミングで設定をしてしまった私のミスです。

そして残りの2つは休憩をジョグに設定すると大きく分かれる傾向です。

休憩のジョグを大切にするか、メインのペースを上げることを大切にするか、どちらに比重をおくかで(どちらも大切ですが偏りが強くなる場合があります)わかれるのではないかと思います。

私の学生時代や学生への指導の経験でもメインのインターバルで遅れるがジョグで追いつくように走る選手もいれば、メインのペースを保つために極端に休憩のジョグが遅くなる選手もいました。

いずれにせよ、このような傾向が起きる場合は適切な負荷で行えていない場合が多いと思います。

設定のタイム通りに走れたから適切というわけでもありませんし、ペースがしっかり上がったから、ジョグのペースが落ちないほど余裕を持てたからいい練習というわけでもありません。

毎回その練習からフィードバックを得て次に繋げることが大事になります。

こんなことからインターバル走を適切に行うことは指導側も走る側も難しいのです。



第4回目:コンディショニングトレーニング(雨天のため)

今回の1回のコンディショニングで身体のコンディションを全て整えるのは難しいです。目的としては今回の練習で自身の身体と一度向き合い、どんな動きがうまくできていないのかを知ってもらうことです。

主に関節の動き考えるようにしています。

まずは関節の可動域(モビリティ)を確保するために、全身の関節運動を網羅したストレッチから始めます。

すでに理解している硬い部分、気づいていなかった硬い部分があり表情を苦痛に歪めながら取り組まれていました。

次にコアトレーニングといって体幹を安定させた状態で手足を動かします。先ほどストレッチで動かした各関節の可動域を体幹を安定させた状態で動かせるかが大事になります。

続いてバランストレーニングで先ほどのコアと同様に体幹を安定させた状態で手足を動かしますが、今度は立位の状態で行います。片足立ちでの動作が増えるため関節を動かす以前に片足でバランスを保てない問題が発生します。

改めて片足立になってみると自身のバランスの悪さに驚いている様子でした。人間の動作のほとんどが片足になるため片足で安定して立てるは基本となります。

最後にストレングスと言って、いわば筋力トレーニングに移ります。

マット上でも立位でもどちらの種目もありますが、関節を大きく動かして筋肉や腱に負荷をかけて鍛えます。

足が攣るなど普段動かし慣れてない部分は色んな問題が発生することもありました。

学生や実業団の選手にも行いますが、自分の身体に意識を向け始めると単調な動きに対して皆真剣になっていく様子は共通でした。フィジカルコンディショニングと呼んだりもしますが、故障して走れない選手が自身の問題を改善しようと取り組み始めると意欲も湧いてくるように感じ、メンタルコンディショニングといっても問題なさそうです。

5回目:3000mタイムトライアル

理由としては現状の走力チェックも含め、中間に3000mを用意することで最終回の5000mのタイムトライアルの指標にもなりやすいと思ったからです。ここで確認するのは最終的なタイムもそうですが、ペース配分や他人をうまく利用して走ることなど戦略的な部分も見たいことがありました。(一人で走るよりも人の後ろにつく方が走りやすいため、少しペースが速くてもあえてついていくなど)

走り慣れてない距離になるとペース配分を掴むのが難しくなります。そのため最初の1周、強いていうなら最初の50m~100mを極端に速く走りすぎてしまい後半の失速の原因になりやすいです。

「1周目が速くなりすぎないようにしましょう」

こんな掛け声をかけていざスタートです。

案の定とでも言うべきか、半数以上の人は見る限り明らかなオーバーペースでスタートしました。

オーバーペースの人は1周目と2周目のラップタイムの差が極端になりやすい傾向があります。

1周あたり10秒以上落ちることも稀ではありません。中学生などのレースではよくこの傾向が目立ちます。

タイムの更新には単純に走力を上げる以外にも自分の力を理解して上手なペース配分で走る技術も求められます。レースやタイムトライアルなど走力が違う人と走ればつられてペースが速くなってしまったり、上記でも説明したあえて人の後ろにつくために予定より速いペースで走らざるを得ない状況などもあり、経験を積んだランナーでもペース配分を間違うことは少なくありません。

1周目がやや速くなり2周目に少しペースが落ちても3周目以降からペースが安定する人もいます。一方で1周毎にペースが落ちていく人もいます。

長距離走では基本的に一定のペースで走り、全体距離の7-8割をすぎてから(3000mなら2000m-2500mくらい)ペースを上げることが望ましいです。

いいペース配分ができている人は意識的にせよ無意識的にせよ、ゴールが近くなることからペースが上がり始めます。

この辺りになるとペースダウンした人もなんとかペースを持ち直したり、あえてもう一段落として最後に備える人も。

ゴール後にはかなり辛そうな様子でしたが、みなさんそれぞれ気づきがあったようです。

ペース配分をうまくやるだけで今日のタイムの1kmあたりの平均ペースで5000mまでいけそうな人もいました。

「今日のペースを5000mまで保てるように頑張りましょう」と伝え終了です。


前半半分を終えて学んだことは相手のことを理解していないうちに具体的なタイム設定はあまり効果をなさない、むしろ逆効果にすらなり得るということです。
また練習に対してのアドバイスや声掛けも個人の傾向を理解してプッシュしたり、抑えるようにしたりしないといけない難しさでした。





日常からの学び、ランニング情報を伝えていきたいと思います。次の活動を広げるためにいいなと思った方サポートいただけるとありがたいです。。