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コンディショニングトレーニングの取り組み

学生、実業団と経験を得て、現在もトレーニングを継続される女性ランナーのコンディショニングをスタートしました。
走っている最中に左脚に力が入りにくくなる症状で長い間悩みを抱えているということです。

コンディショニングを開始するにあたって、これはランニングでも同じですが、まずは相手の現状を把握することから始めます。
本人の主観的な部分、一つ一つの関節の動きのチェックによる客観的な部分を合わせて現在取り組むべき問題点を考えます。

肩から足首までの関節の可動域チェックから入ります。
一つの関節の動きが理解できたからといって全体の動き(ここではランニングの動き)が理解できるわけではありませんが、何かうまくできない動きが出た時に「あの関節の動きに問題があったな」と分かっていると動きの修正をするときのヒントとなります。

実際のランニング動作も見ておくと本人の主観的な症状と動きに関連性があるのかどうかが分かります。



上記の写真を見ると左の足が地面についた時に右側の骨盤が下がる、膝の位置に比べつま先が外を向いている状態です。
対して右の接地時には左の骨盤が引き上がっています。
足が地面に接地するタイミングで関節をしっかり固めきれないと左のように反対側が傾くことが起きます。

その場で片足立ちをしてもらい、軸足のお尻横側に力を入れると凹みができ、反対側の骨盤が持ち上がるのが分かります。
この状態で反対側の足を引き上げる場合と軸足の力がしっかり入ってない状態でやる場合とでは感覚(軸足の臀部で反対の足を引き上げるのか、引き上げる側の股関節を使って引き上げているのか)の違いが分かると思います。

「左脚が機能してない、問題は左にある」とこの段階で結論づけるのは早く、まだまだ分からないことはたくさんあります。なのでこの場で何かすることはありません。
傾向を見ておくだけです。
この段階では主観の症状、客観の動きに一致する部分があるということがわかりました。

実際にこのような傾向が出る人は珍しくありません。それでも問題なく練習を継続できる人もいます。

各関節の動きとしては左の股関節周りを動かせない、足首にややつまりがあり可動域が制限されるなどが分かります。

こうなるとますます左の問題点にばかり意識が向きそうになります。

バランス動作、片足立ち(ただ立つのではなく、足裏全体に均等に体重を乗せた状態で動きを行うことを意識)でのチェックを行うとさっきまでの考えとは一転して右側に多くの問題点が見えてきました。

下の写真を比較すると左は足首、膝、股関節の連動がうまくできて身体の重心を足の中心乗せているような状態です。一方で右は重心がやや後方にある状態です。
大まかな違いは左は臀部に比重が多く、右は大腿部(太ももの前側)に比重が多くなっています。


この後に片足立ちで臀部に力を入れるチェックをすると走りの動きとは一転して右の臀部に力が入りにくいことが分かりました。
同じ動きをするにしても、どの部分が優位になって働いているのか左右で違いでます。

前後、左右、内外に捻る、3面方向の動きでどの点が右は、左はうまくいっていないのかを考える必要があります。

前後の動きは左
左右の動きは右
内外に捻る動きは左右両方

に問題があります。

色々チェックしていくと左右で取り組むポイントが見えてきました。

ここまで分かってから、ある動きの改善をするために種目(何をやるか)を選択します。
トレーニングにおいては何をやるかが先行して、あたかも一つの運動種目、プログラムに特別な意味があるように語られることがあります。
トップ選手が行なっている練習メニューなど色んな切り口から語られることがありますが、そのように行うことはありません。現在も実業団チームのコンディショニング指導にも関わりますが、レベル関係なく考えは同じで、相手の現状チェック、現在の取り組むべき問題点を考え、そこに種目を合わせていくことです。
一般の人ができて実業団のランナーができない動きがあっても珍しくありません。

「決まったメニューに相手が合わせるのでなく、相手の現状に合わせてメニューを組んでいく」
というのがトレーニングの流れです。

前回の傾向を踏まえて次回のトレーニングの準備をします。当日にある動きをやっていて新たに気づく点はよく出てきます。
そのためメニューをあらかじめ決めるのは全体の6-7割で当日の気づきで微調整や種目を追加したりします。

パーソナルトレーニングというと1対1形式のトレーニングと思われがちで、グループに参加したら1人だけでパーソナルになったと感じる人もいるかもしれません。しかし準備段階があるかないかの違いがあり、たとえ1人でも前後のつながりを考慮したメニューかどうかは大きいです。

インストラクター的な指導になるのか、コーチングになるのかはこの点にもあると感じます。

一回で劇的な効果を求めるのではなく、積み重ねで変化していくのがトレーニングの醍醐味だと思います。

走る途中で力が入れにくくなる症状を解決するという目標に向かって、今必要だと思うことを考えながら一つずつ改善できることに取り組むしかありません。

残念ながら魔法のような力を持ち合わせておらず、この問題ならすぐ解決できるということはできません。
誰がやるのか、どのような悩みを抱えているのか分かっているのか、現在の状態はどうか、この辺りの理解がトレーニングを進める上で一番大切かなと思います。

ここで書けるのはこのように考えて取り組むということだけです。
残念ながら悩みを一発で解決する魔法のような力は持ち合わせていません。

それでもここまで読んで興味がある方はコンディショニングの体験可能です
体験では解決よりも自身の身体に注意を向けて、トレーニングをどのように考えるのかを少しでも理解していただければと考えています。


日常からの学び、ランニング情報を伝えていきたいと思います。次の活動を広げるためにいいなと思った方サポートいただけるとありがたいです。。