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オリンピックがもたらす国際交流の場

2019年3月、佐賀県の高校生中・長距離選手男女10人がニュージーランドに派遣され陸上競技交流が行われました。

この派遣の目的はNZ 陸上代表による佐賀県での 2020 年東京オリンピックに向けた事前合宿実施が決定したことにより交流を深めることです。

私はこの派遣には通訳兼サポートコーチとして参加。男子は私の母校である鳥栖工業の生徒を中心に構成されており、帯同のコーチは高校の恩師でこんな形で再び先生や後輩達と合宿に参加することになるとは不思議なものです。

到着初日はニュージーランドの南島で最大の人口を有するクライストチャーチに移動。目的はニュージランド選手権への参加。
どうやらNZ陸連が高校生達のために1マイルレースをプログラムに組み込んでくれたようで、日本では滅多に経験できない1マイルレースを走れるのはまたのない機会です。

ニュージーランド選手権、これは日本でいう日本選手権にあたる大会なわけで、私としてもどんなものか非常にワクワクして現地に到着すると、

「これは地方の記録会か」

と突っ込みたくなるような規模にやや驚きも。競技場にはサブトラックもなければ参加選手のレベルも幅広いように感じられるものの、やはり国内選手権、トップの記録は1流選手の記録でした。

さて1マイルレースにはどのような選手が参加してくるのか楽しみではあったが直前エントリー制で大会側もレース当日にならないと分からないとのこと。高校生達も海外選手達と走れるのは楽しみなようで、緊張感と共に楽しんでいるようにも感じられました。

レース当日はあいにくの雨。どうやら参加者はいないらしく高校生達だけでのレースということに。いろんな予想外がありすぎて、みんなにも笑みが。先生方も当初より練習を目的にされてたようなので、こういう経験も悪くないといことで大会を楽しむことに。

余談ではありますがオーストラリアから別に入国した私は格好つけて入国理由をビジネスにしたことで、給与の支払い元などいろいろ調べられ空港を深夜2時まで空港で取り調べられる羽目に。

スタート直前まで通訳として選手のサポート予定ではあったが、一応選手権で待機場所は選手しか入れないようなのでレースにエントリーして急遽、私も1マイルレースに参加することに。

アナウンスで日本の高校生が1マイルレースをやることが伝えられ現地の方々もやや興味を持ったようでいろんな人が「Good Luck」と声をかけてくれる。スタート位置も初めてで1マイルを4周と勘違いしてた選手もいて通常のスタート位置よりやや後方に少しびっくり模様。
「On your marks」の合図があると思いきやいきなり号砲が鳴りスタート。私も含め号砲とともに「えっ」の声が。

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中距離レースを走るのは久しぶりすぎて後輩達のスピードには全く対応できませんが、こうやって海外の地で高校の後輩達とレースを走るのは不思議な気分でした。とりあえず全員初1マイルなので全員自己ベストということに。

ゴール後は大会のスポンサーである「Jennian」という会社の宣伝のためTシャツを着ての記念撮影。

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クライストチャーチを少し観光した後はニュージーランド最大の都市オークランドへ移動。

滞在先はナショナルトレーニングセンター「AUT Millennium」

ここオークランドでも2つの記録会に参加。もちろん練習も。

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施設のトラックを行い、各グループに分かれ練習。私は鳥栖工業の後輩達のペース走に参加。

練習後にフォームドリル、フィジカルトレーニングのレクチャーをしてくれたのはポールコーチ。ここオークランドでジュニアからシニア選手まで500人ほどの指導にあたっているようで、現役時代は1500m3分38秒の自己ベストを持つとのこと。

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一人一人の癖を見て、丁寧に指導してもらい、選手みんな熱心に耳を傾け非常に充実した様子。最後は私のところへ来て、どの選手が一番フォームドリルに取り組むべきかなどの説明もしてくれるなどかなりのナイスガイです。

私の目線からでも教えていただいたフォームドリル、足の接地時間が短く、動きがスムーズな選手ほどうまく対応でき、そうでない選手ほど苦戦しているのがはっきりと分かりました。

指導の後は先生方からコーチへの中長距離選手への調整法についての質問。「個人によってすごく違ってくる。私が教える選手の1人は5000m13分30秒台の記録を持つが彼は練習量を落とすことを嫌うため、量自体はあまり変えず1回の強度を落としていく。メインのレースの10日前に1番質の高い練習を行う。」

私も中高時代によく経験したレース前日の1000mに対しては

「その考えには少しびっくりで、私はやろうとは思わない。ただ選手達がその方法に慣れていて、それがいいと思ってやっているのなら否定するつもりはないし、むしろ続けたほうがいいと思う。」

私も最近感じることですが、何かをやることで与える影響はフィジカル面だけでなくメンタル面も大きくあると思い、一つの面だけのメリットを考えるのではなく、いろんな面からその取り組みを考え、トータルとして自分に与えるメリットが大きいのかを考えたほうがいいように思います。

ただポールコーチのコーチング理念として調整法も含め、練習メニューは個人に合わせて作るとのこと。全員を一まとめにするのは好きではないようでした。

室内練習場を去ろうとした時にちょうど出会したのは女子砲丸投げのバレリー・アダムス選手。北京、ロンドン五輪で2大会連続の金メダル、リオ五輪でも銀メダルと五輪3大会連続のメダリストです。

バレリー

夕方は施設のトラックで行われたナイターの記録会に参加。この日は800mのレースのため希望者のみの参加で、私は2分10秒のペーサーとして参加。内心引っ張れるかかなり不安でしたが1周目終了の時点で誰も後ろにいなかったためペースを落とすことがでホッとしました。

男女ミックスレースで飛び込み参加も可能な非常にラフな記録会でした。

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施設滞在中は朝食は自炊になります。先生の手伝いもありながら慣れない自炊でしたがみんな割りかし楽しんでいたようにも見えました。

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夜はミーティング。今回だけではなく、未だにこうやってミーティングを行う時に前に座る側になったことに違和感を覚えます。

ミーティング

最終日前日はオークランド市街で行われた記録会へ。1500m、3000mへの参加となりました。こちらのレースも当日エントリー制となっています。

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レース後にニコニコしながら話しかけてくるおじいさん。

「選手権でもみんなのレースを見てたよ」と。

「3000mのトップだった子のあのペース配分は良くない。もう少しイーブンで走るように伝えたほうがいい。ちなみに彼の200mのベストはどのくらいなんだ?」

などいろいろアドバイスが伝えられ、200mのベストは知らないと伝えると

「なぜ200mのタイムトライアルを行わないんだ。」

などいろいろ急すぎて戸惑ってる中、トレーニング理論や彼の経歴について聞いてるとローマ五輪のマラソンで銅メダルを獲得したなどの話や金栗四三さんが彼の家にも来たことがあるとかでどうやら只者ではないようですが、時間がなかったため名刺をもらい話は終了することに。

バリー・マギー

後日調べてみるとアーサー・リディアードの教え子で選手としてもコーチとしても一流の成績を収めていることが判明し、もう少し話をしっかり聞いておけばよかったとものすごく後悔しています。

こうやっていろんな出会いもありレースを3本、練習、観光も行いニュージーランドの文化に触れることができた5日間は生徒達にとっても素晴らしい経験になったと思います。。高校生でこんな経験ができたことをうまく生かして、今後彼らの陸上競技だけでなく人生に対する視野までもが広げてくれることを期待します。

そして来年には今度はニュージーランドの選手達が佐賀県にやってきます。もっと多くの学生が交流を通していろんな事を学べる場になってほしいです。

これからオリンピックという一大イベントに向けて様々なイベントが始まると思います。オリンピックがもたらす影響がどんなものになるのか楽しみですね。



日常からの学び、ランニング情報を伝えていきたいと思います。次の活動を広げるためにいいなと思った方サポートいただけるとありがたいです。。