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書評『シルバー民主主義』(中公新書)

 シルバー民主主義とは、高齢者優遇の政策が行われることを言う。少子化、人口減、投票率の停滞などが顕著な日本において、シルバー民主主義を防ぐ術はないようにみえる。

 本書は、高齢者の「目先の利益」を過度に重視するあまり、持続性を失っている社会保障制度の抜本的な改革に目を向ける。現行の社会保障制度は、国債や税収、社会保険料など勤労世代の負担で成り立っている。年金も賦課方式であるため、勤労世代から高齢者への所得移転である。
 持続性を失っている社会保障制度は、高齢者に無関係ではない。そのため、持続性ある社会保障制度を確立することが高齢者自身の利益になり、子世代、孫世代への利益になることを示す必要があると筆者は述べている。

どの政党も、票を集めるために高齢者の「目先の利益」を優先せざるを得なくなっているという。高齢者の理解を得ることで、「聖域」とされている社会保障制度の改革に着手できるようなる。
 高齢者世代内の所得再分配(年金所得への課税)、生活保護制度の改革、少子化対策、年金改革など、筆者の提案は多岐に渡る。いずれにせよ、それら改革が自身の利益になり、これからの日本を形作るものだと高齢者に認識してもらうことが第一歩となる。

 著者は世代間の分断を煽ることなく、高齢者と勤労世代の協調で少子高齢化社会を乗り越えようとしている。世代間の不公平感の縮小は、民主主義の実現に欠かせない。

八代尚宏「シルバー民主主義」中公新書,2016

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