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古事記神話入門 三浦佑之著 書評



<概要>
50年以上古事記を研究してきたという著者が、古事記の上中下巻のうち、神々の物語を扱う上巻を対象に原文の口語訳と共に解説した入門書。

<コメント>
神話なので、あくまでフィクションですが、大枠の日本の成り立ちを仮説としてイメージするには、きれいに整理されているなあと思います。

◼️垂直的世界観
天孫(ヤマト)民族に興味を持って、それなら古事記ということで、専門家による入門書を読んだんですが、天孫民族というだけあって、大本の神話の構成は、上下の垂直(天地)関係で構成されているというのがよくわかります。

*高天の原→地上界(葦原の中つ国)→黄泉の国(地下)の流れ

*黄泉の国とは人間の住むところの地上(葦原の中つ国)を中心として、天空の高天の原、地下の黄泉の国とう垂直的な三層構造を持つ北方系の世界観に裏打ちれた異界(解説:世界の始まりより)。

◼️水平的世界観
対して、根の堅州の国は、水平的で循環的な世界観で南方から来た世界観からくる異界。南方系=海の民の九州の宗方氏・安曇氏や出雲民族は、海の民として沖縄ノのニライカナイにも通じる世界観。

*地上界(葦原の中つ国)⇄根の堅州の国(海の彼方)

彼ら海の民は、日本海を伝って越の国(越前・越中・越後)に流れ、糸魚川市の姫川を登って諏訪湖に至るという。その終点に諏訪神社があるというのも、その流れ。姫川では翡翠が取れるので、翡翠を使った出雲の勾玉などもこの流れに伴うもの。

確かに長野県には「安曇野」や「穂高」などの名称が残っており、その名残なのかもしれません。

◼️世界観の統合=古事記
北方系の垂直の世界観に南方系の水平の世界観が統合されていくような神話が古事記のように感じます。天孫民族が日本列島の九州北部から関東地方までのエリアを支配していく様子です。

スサノオが出雲に向かうのも象徴的で、天孫民族が出雲民族はじめとする海の民を支配していくイメージ。それは国譲り神話も同じ。

したがって、この時点では隼人(九州南部)やエミシ(東北地方)は、大和政権が支配するエリア以外。征夷大将軍がエミシに攻め込んでいく様子はその後の時代。

こうやって整理してみると古事記は、日本は天孫民族が海の民を統合(支配)し、更に北方や南方に進出(侵略)して広がっていく歴史のうち、最初の海の民を統合する歴史を神話的に語っているんですね。

*写真:一畑電車 出雲大社前駅

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