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「未来の地図帳」河合雅司著 書評

<概要>
産経新聞の記者だった著者が、データに基づき少子高齢化社会の地域別の実態を紹介するとともに、少子高齢化社会に対応した日本再生策を都市と地方に分けて提言した著作。

<コメント>
未来の殆どのことは予測できませんが、未来の人口だけは確実に予測できます。そして日本は急激な少子高齢化が加速していく社会。

本書では空恐ろしい将来の人口構成や絶対数を紹介しています。2045年(30年後)、秋田県の人口は62.4%減(2015年比)、北海道歌志内市の人口813人、群馬県南牧村の高齢化率78.5%など、衝撃的な数字が並びます。

地方はすでに超高齢化社会で、今後は人口が激減、都市部は人口は緩やかに減少するものの、超高齢化社会に今後突入していきます。

そして著者は高齢者人口がピークを迎える2042年(3,878万人)を目標に、課題が全く異なる東京圏と地方の二つに分けて、以下提言を行なっています。

■東京圏を独立国家に

東京圏(「1都3県」をイメージ)は、人口は緩やかに減少しますが、元々住んでいる人が高齢化する上に、さらに地方の高齢者も現役世代が面倒みるために呼び寄せるため、急速に高齢化が進みます。

一方で若者の流入率も依然として高い。特に女性は、女性が就職を希望する第3次産業の就職口が地方でもともと少ないため、どうしても東京に集まってきてしまうといいます。

著者としては、超高齢化になっても生産年齢人口は圧倒的に多いので、日本の推進エンジンとしてグローバルに戦える擬似的な都市国家として特区扱いにすべきと提言。

著者は言及していないものの、多分シンガポールなどの都市国家をモデルにすればよいと考えているのかもしれません。世界中から優秀な人材や資本を呼び寄せ、徹底的に規制緩和しつつ許認可制度なども簡素化するなど、再び東アジアの拠点とし復活できるよう再生。

そして東京圏が生み出した付加価値を地方活性化に活用(今の地方交付税と何が違うのか不明)。また地方が人材や電力・水などを東京圏に供給する場合には、それ相応の対価を支払ってもらう仕組みを作ればよいといいます。

■地方をドット型国家に

イメージとしては、市町村を廃止し、都道府県の下に、ドット型の拠点(著者は王国と呼称)を多数作る。既存のコンパクトシティのように全てのエリアを対象にするのではなく「すでに賑わっている場所」や「既存インフラ」をうまく活用しながら王国を点在させる。そうすれば高齢者が自ら歩いて生活できることが可能な街となり、仕事も遊びも病院通いも各種インフラも行政単位も王国内で完結できる。

更に、コミュニティも生まれ、単身世帯の孤立化・孤独死などを回避できるだけでなく、住民全員参加で王国を運営するような自助の行動を促すことで行政コストなども格段と安く済ませることができるのでは、といいます。

具体的には、アメリカ西部劇に登場する宿場町、古代中国・ヨーロッパの城郭都市など。現代ではイタリアのファッションブランド「ブルネロ・クチネリ」があるソロメオ村をモデルとしたらよいといってますが、日本においては人が集積しやすい既存のショッピングセンター(イオンなど)の周りだとか、海外との貿易面で有利な空港周辺だとか、高齢者向け集合住宅周辺だとか、拠点になりそうな既存の核となる施設を中心に再配置すればよいとのこと。

人口規模的には500人単位から10,000人単位までその王国の実情に合わせて集住。

以上、地方では面展開でバラバラ住居が点在するのではなく、非居住地域と居住地域を明確に区分して居住地域=王国に集まって暮らしましょう、ということ。

確かに地方であっても住民が「ポツンと一軒家」ではなく、1箇所に集住していけば、地方で必須の車移動も不要になり、行政コストはぐんと落ちて地方で生きていく現実味が出てくるように感じます。

一方で直近の感染対策上は集住は難がありますが、これも地方の生きる道としてはなんとかよい方法で解決してカバーしていくしかありません。

それでは肝心の日本の今の政治や役所が、このような大改革ができる実力があるのかどうか?ですがだいぶ疑問。やはり日本はこのまま衰退していくのでしょうか?(日本は長期では「売り」?)

*写真:千葉県野田市 関宿城跡


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