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「根回し」こそ最高の共通了解の道

私は勤務時代、主に企画関係の仕事をしてきたのですが、仕事をしている間、企画の仕事は、極端にいえば「10%が企画、10%が会議、残り80%が調整=根回し」で、企画といってもピュアなプランニングの仕事はほんのちょっとで、ひたすら仕事の同僚、上司、関連部署、そしてそれぞれの組織のキーパーソンとのコンセンサス形成に向けた地道な根回しに時間を費やしてきまして「本当に時間の無駄だな」と思ってきたのですが、いったん早期退職して哲学を勉強すると実は「根回し」こそが最も重要な仕事なんだなと最近思い直しています(もう手遅れですが)。

(ただし、強力な経営トップからの指示に基づく企画は別物)

我々は、一人一人全ての人間が全て別々の世界を持っている、つまり別々の「正しさ」を持っています。したがって仕事に関しても、私の「こうすべき」は何千人いる仲間のうちのたった一つの「こうすべき」でしかありません

何千分の一の「こうすべき」を、マックスで何千人全員に「こうすべき」と思ってもらわなければいけません。そのためには企画そのものの納得性の高さは当然ながら、関連するより多くの人たちに、彼らの腑に落ちる「正しさ」として彼らの生きる世界の中に取り込んでもらわなければなりません(哲学用語では「内面化」という)。

より多くの人、特にラインの人間や各組織のキーパーソン、そして何よりも現場を預かる仲間の「世界」に「正しさ」を内面化してもらってこそ企画が「本当に」実現するのであり、これがなければ稟議が通ったとしても、それぞれの現場でスルーされ、あるいはいい加減に取り組まれ、稟議で通した投資が無駄な投資になってしまうこと必須です。

(私もそんな経験を何度もしてきました)

でも根回しは、稟議が通ってからでも遅くない場合もあります。その仕事をやってもらいつつ、当該企画の啓蒙活動をひたすら地道にしていけば、より多くの人の「正しさ」として内面化され、具体的な成果となって効果発揮することもあります。

なので、ひたすら「根回し」してコンセンサス形成していくことがとっても大事。「根回し」こそ、より多くの人に「内面化」を進め、企画を成功させる最も重要な作業なのかもしれません。

*写真:2008年 金沢市 兼六園の「根上松」

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