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思想(哲学と宗教)

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価値観の学問そのものといって良い哲学、価値観そのものといってよい宗教を勉強する事で「価値観とは何か?」に迫りたいと思っています。
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#脳科学

なぜ哲学を勉強しているのですか?

■他者:なぜ哲学を勉強しているのですか? ■自分:自分は、どう生きるべきか、どう生きるべきでないか?根本的に考えた上で生きたい=行動したいからです。 ■他者:その答えは出たのですか?あるいは出そうですか? ■自分:出ました。 ■他者:答えは? ■自分:「答えはありません」というのが答えです。 ■他者:それでは、哲学の勉強は無駄でしたね。 ■自分:無駄ではありません。「答えはありません」という答えが出たので、とてもスッキリしています。 ■自分:もうちょっと詳しく

立花隆(自然科学)と佐藤優(形而上学)の限界

文藝春秋今月号「立花隆特集」の中の佐藤優の記事『「私とは波長が合わなかった「形而上学※論」』は興味深い記事でした。 ※形而上学 何らかの任意の前提=絶対真理をおいてロジックを組み立てる学問や思想のこと 私も立花隆の本は学生時代に「文明の逆説」を読んで感銘を受けて以降、「日本共産党研究」や「田中角栄研究」「宇宙からの帰還」「農協」「脳死」の他、たくさん愛読させていただきました。ご冥福を祈りします。 さて、佐藤優の記事について簡単に要約すると 「佐藤優は、キリスト教信者で

「読まなくてもいい本の読者案内」橘玲著 書評

<概要> 「読まなくてもいい本」、つまり古いパラダイム(哲学・文系心理学・社会学・法律学・経済学)に関する本ではなく、新しいパラダイムといえる最新の学問(複雑系、進化論、ゲーム理論、脳科学、功利主義)に関する本を読むことで、価値ある知を身につけるべきと提言した著作。 <コメント> 従来から橘さんの関心領域に興味があり、彼の本を通読してきた私は、5年前(2015年)に本書を読むに至って「納得できない感」満載になった私にとって記念すべき著作です。フッサールが提唱した現象学をバッ

「脳がわかれば心がわかるか」山本貴光&吉川浩満著 書評

<概要> 「脳科学の研究が進めば、いずれ人の心は解明できる」という、(ノーベル賞学者でも信じてしまう)一見真っ当にみえる考え方の原理的な錯誤を、科学的思考の原理と合わせてわかりやすく解説した著作。 <コメント> 「脳がわかれば心はわかるか」→「わかりません」というのが本書の回答。 初版は2004年に出版されているのでだいぶ古い本ですが、内容はいまだ古びていない。私の関心事の一つである脳科学・自然科学の限界と可能性について、哲学的視点から社会的視点まで幅広く解説しています。

脳科学と哲学の相似性「単純な脳、複雑な私」池谷裕二著 書評

◼️価値観における脳科学と哲学の相似性 『「あのガキ、気にくわないから叱ってやったよ」なんてエラそうにいう親父がいるけど、でも、それは勘違いだ。自動的に怒りが湧いてきて、その感情にしたがって叱っただけ。でも、本人は教育してやったつもりになっている。ただそれだけだよね(430頁)』 池谷氏によれば人間の自由意志は自分の預かり知らぬ無意識によって支配されているといいます。でも私が思うに「無意識」そのものが自由意志であって、その根拠となるのが汎化されたその人の価値観=個人の虚

「科学的思考の限界」 脳科学編

引き続き「進化しすぎた脳」からの知見です。 ホモ・サピエンスという種ならではの外的な特徴というのは「直立2足歩行(鳥は直立していないので違う)」ですが、内的な特徴は「言語」を操れること。 言語化できることによって、抽象的な概念を扱うことが可能(汎化という)になり、抽象的な概念によって記憶が可能になって、ワーキングメモリや可塑性を持った脳が生成された。 脳は、反射的にも意識的にもインプット情報を判断していくことによって環境に適応化してきたといえます。 脳の記憶は、コンピ

世界があるのではなく、自分が世界を作っている。 脳科学編

哲学(竹田青嗣先生やニーチェ)や歴史学(ユヴァル・ノア・ハラリ)、行動経済学・心理学(ダニエル・カーネマン)同様、脳科学的な観点からも「世界は自分が作っている」らしい。どの学問も突き詰めていけば、同じような仮説になるというのも、とっても不思議です。 以下「進化しすぎた脳:池谷裕二著」より。 ◼️世界は脳の中で作られる 人間の目は100万画素しかなくて大昔のデジカメと同じぐらいの粒度しかない。しかも30分の1秒単位の細切れの画像しか知覚できないから、ノイズの多いかつ細切れ

なんでも因果関係で考えてしまうのは? 脳科学的仮説

哲学を勉強すると「世界に普遍的な原理」はない(原理的にわからないといった方が正確か)という結論に行き着くのですが、では 「そもそもなぜ人間はひたすら因果関係を求めてしまうのか?」 とついつい問いたくなってしまいます。 その答えは、心理学的には上記のカーネマンの「システム1の働き」だという知見。 そして脳科学的には脳神経学者のデイビッド・J・リンデンが「宗教」を題材に以下のように説明しています(「脳はいい加減にできている:8章宗教と脳」より)。 (上記2冊は全く同じ書

ホモ・サピエンス全史と脳科学

ホモ・サピエンス全史(ノヴァル・ユア・ハラリ著)における最も重要な概念は「認知革命」によって形成された「虚構」ではないかと思う。 「認知革命とは7万年前から3万年前にかけてみられた新しい思考と意思疎通の方法のこと。遺伝子に突然変異が起こり、サピエンスの脳内の配線が変わり、それまでにない形で考えたり全く新しい種類の言語を使って意思疎通をしたりすることが可能になる(ホモ・サピエンス全史、第2章)」 「認知革命によって高度な言語を発明し、虚構すなわち架空の事物について語る能力こ