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思想(哲学と宗教)

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価値観の学問そのものといって良い哲学、価値観そのものといってよい宗教を勉強する事で「価値観とは何か?」に迫りたいと思っています。
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#人工知能

なぜ哲学を勉強しているのですか?

■他者:なぜ哲学を勉強しているのですか? ■自分:自分は、どう生きるべきか、どう生きるべきでないか?根本的に考えた上で生きたい=行動したいからです。 ■他者:その答えは出たのですか?あるいは出そうですか? ■自分:出ました。 ■他者:答えは? ■自分:「答えはありません」というのが答えです。 ■他者:それでは、哲学の勉強は無駄でしたね。 ■自分:無駄ではありません。「答えはありません」という答えが出たので、とてもスッキリしています。 ■自分:もうちょっと詳しく

学生にとっては、既にAIの限界が常識に

先日数学者新井紀子さんのベストセラーを読んだばかりだったのですが 彼女による東洋経済の昨日アップされた最新記事(2020年8月26日)を読むと 既に、汎用AI信仰やシンギュラリティは、AI専攻の学生の間では夢物語として、過去の遺物化しているらしい。 最近は、AIが現実社会の中に浸透してきて、Googleの翻訳機能や、アップルのSℹ︎ri、Amazonエコーなどを日常生活で利用することも多い。 そして実際使ってみてその限界などを体験すると発展途上技術の未熟さとは異なる、

21Lessons ユヴァル・ノア・ハラリ著 書評

全世界で話題のハラリの著作は、ホモ・サピエンス全史→ホモ・デウス→21Lessonsの順番で通読をお勧めします。本書は、これまでの著作に引き続き、現代世界の世界像と近未来像を解明するとともに「では著者自身はどうするのか、どうしているのか」を解説。 各章にこれでもかとばかりの実例=ファクトをあげつつ、かつ読者に分かりやすいように、絶妙なそのファクトの組み合わせによって独自のロジックを編み上げていくその筆力は、その博識さや知性もさる事ながら、説得力あるその表現にどんどん飲み込ま

「21世期の啓蒙」と人工知能

スティーブン・ピンカーも人工知能に対する懸念については「人工知能は進化しても人間は滅ぼさない」として、人工知能による「テクノペシミズム(悲観論)」には否定的。 「AIの暴走を危惧する第1の誤りは、知能とモチベーションを混同していること(21世紀の啓蒙下巻第19章)」と指摘。 「知能とは、ある目的を達成するため、新たな手段を考える能力のこと」と定義し、知能が高いことと「何かを欲すること=目的」は別物。 例えば、人間の知能は、ダーウインの自然淘汰の産物であって競争を生き抜く

人工知能と欲望論

人工知能に関して「欲望論」をもう一度確認のために当該箇所のみ再読。 欲望論でも、巷で有名なジョン・サール(哲学者)の「中国人の部屋」の事例なども紹介されていますが「人工知能は人間と全く同じになるかどうか」という点に関しては人工知能の専門家と概ね同じ意見。様々な形で否定しているが、一部紹介すると以下の通り。 人工知能という二進法(欲望論ではスイッチのオンオフと表現)によって情報処理される機械が、人間の生理的機能も、心の心的機能も、認識論的にも全て置換できるという前提そのもの

人工知能と人間の境目「人工知能に哲学を教えたら」読了

人工知能の可能性については不確定要素が多いという断りを入れた上で、その可能性の行き着く先について、哲学の対象となるテーマごとに思考実験した本。人工知能は人間ではないものの、人工知能も「哲学できる」という結論。いわゆる哲学の問題「世界とは何か?」「良き根拠とは何か」など、哲学のテーマについて人工知能としての問題解決能力があるということです。そして「信念」もある。しかし人工知能は生き物でももちろん人間でもないので、生き物としての本能だとか人間としての自我や情動だとか意識みたいなも

「人工知能は人間を超えるか」松尾豊著 読了

人工知能は、人間の脳にどこまで近づいていて、どこまで近づこうとしているのか?ディープランニングは、数多ある人間の脳の能力のどの部分を代替しようとしているのか?がよくわかる本です。 人間は、攻殻機動隊のテーマでもある「ゴースト」を持っている。ゴーストはどこに宿るのか?それは間違いなく脳だと思うが、それは意識であり、意思であり、自我そのものだ。 著者の松尾氏曰く「人間=知能+生命」。つまり、人工知能は、現段階の科学ではどこまで行っても知能を代替することはできても、生命を代替す

AI原論  西垣通著 読了

AIと人間の思考含む生き物の行動原理の根本的違いとして、AIは「他律的」、生き物は「自律的」として原理的にAI(ここでは汎用AI)は生き物になることはできないということを解説した書籍。 「生きている」とは他者からは「不可知的」であるとし、その行動原理(というか存在)を哲学者メイヤスー「思弁的実在論」の「偶然性」の概念を参照しつつ「自律的」とは「偶然性が必然」であるという考え方から解説。 そもそも西洋人が汎用AIを人智を超えた存在として位置付けたがるのはキリスト教の三位一体