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思想(哲学と宗教)

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価値観の学問そのものといって良い哲学、価値観そのものといってよい宗教を勉強する事で「価値観とは何か?」に迫りたいと思っています。
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#行動経済学

なぜ哲学を勉強しているのですか?

■他者:なぜ哲学を勉強しているのですか? ■自分:自分は、どう生きるべきか、どう生きるべきでないか?根本的に考えた上で生きたい=行動したいからです。 ■他者:その答えは出たのですか?あるいは出そうですか? ■自分:出ました。 ■他者:答えは? ■自分:「答えはありません」というのが答えです。 ■他者:それでは、哲学の勉強は無駄でしたね。 ■自分:無駄ではありません。「答えはありません」という答えが出たので、とてもスッキリしています。 ■自分:もうちょっと詳しく

『人はどこまで合理的か 下』より プロスペクト理論・信号検出理論など

<概要>「私たちを導くものは合理性でなければならない」という主張に基づき、下巻は上巻に引き続き、合理性の可能性と限界を解説するための「合理的選択理論」「信号検出理論」「ゲーム理論」「相関と因果」について紹介したのち、非合理に陥りやすい人間の本性と合理性の重要性とそのエビデンスについて最後に紹介。 <コメント>ここからは『人はどこまで合理的か 下』から。今回は「合理的選択理論」「プロスペクト理論」「信号検出理論」。 ■人間は時たまエラーを起こすもののデフォルトは合理的生き物

全人類が学ぶべき道具「ベイズ理論」

引き続き『人はどこまで合理的か 上』からの知見。 今回は、ピンカーが最も有効な合理的思考の一つとして紹介している「ベイズ推論」です。その前に確率論と利用可能性ヒューリスティックについて、興味深い紹介をしているので、まずはそちらから。 ■偶然性・不確実性を数字で認識するよくよく考えてみると、この世の中は、合理的に説明できることの方が希少で、そのほとんどは偶然性と不確実性に支配されていることがわかります。 なので、ソクラテスがいうように「不知の自覚(昔は「無知の知」といった

「ウヨク」「サヨク」という宗教

私は、オーソドックスな「民主主義」が政治信条で、現段階では誰もが納得できる最も普遍的な考え方だと思っています。 この考え方はシンプルで「異なる考え方を共存させる」ということ。 なので、民主主義の反対は「原理主義」。 原理主義とは「異なる考え方を排除する」ということ。 幸いにして、私たちが住んでいる日本は、民主主義が憲法で保障されていて本当に幸せな国だと思います。 なので昔からよく言われる二つの政治信条「ウヨク」「サヨク」も、信じている人がいる限り、共存させるのが民主

哲学者「東浩紀」&温泉旅館「松本本箱」

松本駅からバスで30分の浅間温泉に行ってきました。 ちょうど「松山市の道後温泉」「上田市の別所温泉」「甲府市の石和温泉」みたいな位置づけで、温泉って鉱泉のように掘れば出る場所にあるわけではない(地質学的には断層の裂け目や火山の近くに出やすい)と思うのですが「都市と温泉→日常と非日常」の地理的位置づけが、非常に面白い関係ではないかと思います。 かつては、道後温泉と同じように市街と温泉地を結ぶ路面電車が走っていたそうですが、1960年代に廃線になったそうです(今は1時間に1〜

「ゲンロン0観光客の哲学」東浩紀著 書評

今我々が生きているこの時代を様々な立場の人が論じていますが、現代哲学者は今の時代をどのように捉えているのか、本書は東氏なりの一つの現代社会に対する一つの解釈とその方向性を出してくれたのかなと思います。 著者によれば、現代社会をナショナリズム(政治、思考、コミュニタリアニズム、国民国家、スモールワールド、ツリー)の世界とグローバリゼーション(経済、欲望、リバタリアニズム、帝国、スケールフリー、リゾーム)の時代の二重構造と捉えた上で、この二重構造をリンクする新しい概念として「偶

Think Smart ロルフ・ドベリ著 書評

因果律から逃れられない人間の宿命は、本書でもその本領を大いに発揮しています。 この宿命は人間の人間たる繁栄を生み出した源で人間にとって最も重要な能力だと思いますが一方でデメリットも多くあり、それが哲学や行動経済学・心理学、脳科学によって解明されつつあります。特に以下は行動経済学の成果です。 ◼️カチッサー効果 行動に意味を添えるだけで、その行動は周りからの理解と譲歩を得やすくなる。驚くべきことに、その理由が意味をなしているかは重要ではない。「**なので」というだけでその行

世界があるのではなく、自分が世界を作っている。 脳科学編

哲学(竹田青嗣先生やニーチェ)や歴史学(ユヴァル・ノア・ハラリ)、行動経済学・心理学(ダニエル・カーネマン)同様、脳科学的な観点からも「世界は自分が作っている」らしい。どの学問も突き詰めていけば、同じような仮説になるというのも、とっても不思議です。 以下「進化しすぎた脳:池谷裕二著」より。 ◼️世界は脳の中で作られる 人間の目は100万画素しかなくて大昔のデジカメと同じぐらいの粒度しかない。しかも30分の1秒単位の細切れの画像しか知覚できないから、ノイズの多いかつ細切れ

世界があるのではなく、自分が世界を作っている

歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリの「21Lessons」を読んであらためて思ったのは「世界があるのではなく自分が世界を作っている」ということ。 科学的思考に慣れている我々は、どうしても「モノ=この世界」ありきで何事もイメージしてしまいます。 ところが、よくよく考えてみると我々の世界像は、自分が生まれ育っていく環境(主に人間関係)の中で自分の関心や欲望に応じて世界像が形作られ大人になっていきます。大人になってからも出会いと別れの中で、SNSなども含めて自分の世界像をアップデー

超予測力 フィリップ・E・テトリック

珠玉のキーワードが、溢れるばかりです。 ◼️自らの意見とは死守すべき宝ではなく、検証すべき仮説に過ぎない(積極的柔軟性) 事実が変われば意見を変える。多様な視点を大切にし、それを自らの視点に取り込む。可能性を多段階評価する。自分の思考に認知的、感情的バイアスが影響していないか確認する。システム2(※)を動員し、意識的思考によってシステム1(※)のもたらす無意識的かつ瞬間的な判断の過ちに気付く。 ※1:システム1=我々が意識せずに反射的に判断する領域。自動的に働く知覚的、認