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思想(哲学と宗教)

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価値観の学問そのものといって良い哲学、価値観そのものといってよい宗教を勉強する事で「価値観とは何か?」に迫りたいと思っています。
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#啓蒙主義

なぜ哲学を勉強しているのですか?

■他者:なぜ哲学を勉強しているのですか? ■自分:自分は、どう生きるべきか、どう生きるべきでないか?根本的に考えた上で生きたい=行動したいからです。 ■他者:その答えは出たのですか?あるいは出そうですか? ■自分:出ました。 ■他者:答えは? ■自分:「答えはありません」というのが答えです。 ■他者:それでは、哲学の勉強は無駄でしたね。 ■自分:無駄ではありません。「答えはありません」という答えが出たので、とてもスッキリしています。 ■自分:もうちょっと詳しく

近代は「神道」、現代は「啓蒙主義」

今回奈良に長期滞在して感じたのは、多数の古墳が宮内庁によって、学問的にはその天皇の墓(陵という)ではないのに(または不明)、勝手に特定の天皇の墓にされてしまっていることです。 [行燈山古墳(宮内庁的には崇神天皇陵):2021年5月。以下同様] こんな不可思議なことが起きるのはなぜなんだろう、と考えると 宮内庁が、 「啓蒙主義の価値観を根拠とした日本国憲法を奉ずる現代に、戦前=近代の明治政府の価値観を持ち込んでしまっているから」 です。 厳密にいうと、私の視点は日本

古代は「仏教」、現代は「啓蒙主義」

古代史の勉強をしたり、実際に奈良のお寺を回っていると、奈良時代の社会を支える虚構(=社会を成り立たせる物語)は仏教(今は啓蒙主義)だったんだな、と改めて感じます。 (薬師寺:2021年春、以下同様) 今に生きる我々がお寺を訪れるのは、多くの人は観光資源としての建築や仏像など、芸術鑑賞やちょっとしたお願い事をするためだと思います。しかし当時の人にとっては、芸術体験やちょっとしたお願いのためために訪れたのではなく、病気や貧困などの真剣な悩みを解消するために訪れていたでしょうし

「移動の自由」の重要性とは

新型コロナによって移動の自由が制限されています。「ステイホーム」つまり家の外には出るなということで、歴史上でもよく出てくる「軟禁」という拘束方法に近い状況です。 移動の自由は、実は自由の中でも一番と言っても良い基本的な自由の要件です。 「人を拘束する」とよくいいます。罪を犯せば罰は「移動の自由禁止」です。 歴史的には、拷問や死刑などの罰の方が主流だっったと思いますが、現代世界においては(イスラム国家では鞭打ちという拷問もまだ残存しているらしい)、刑務所に拘束して移動の自

鴻上尚史のほがらか人生相談 書評

珠玉の言葉が満載です。やっぱり演劇で鍛えられている人は人間関係でも鍛えられてるんだなという印象。 そして鴻上さんの価値観は「近代市民社会の原理=啓蒙主義」そのものなんで、そしてちょっと現象学的なんで、私の価値観(社会の虚構の方)にもマッチしていて、とても心地良い。まさに私にとっての確証バイアス全開な著作でした。 ◼️「この世の中には”ちゃんとした結婚”があって、私の結婚はそれとは違っていてだからどうしていいか分からない」(相談1) 鴻上さんのいうように、世の中には「ちゃん

近代市民社会の原理 実践編

スティーブン・ピンカーのいう「啓蒙主義=近代市民社会の原理」の実現が、この時代の日本に必要な社会の価値観(=虚構)だと私は思っています。 昨日(2020年3月21日)、視聴したNHK:ETVのSWITCHインタビューで登場した「ぼくはイエローで、ホワイトで、ちょっとブルー」の著者、ブレイディみかこさんと、作家・演出家の鴻上尚史さんのお二人は、そのまま近代市民社会の原理そのもの。 近代市民社会の原理は「信念対立の克服」がキーワードなんですが「じゃあ、どうやったらいいの」とい

21Lessons ユヴァル・ノア・ハラリ著 書評

全世界で話題のハラリの著作は、ホモ・サピエンス全史→ホモ・デウス→21Lessonsの順番で通読をお勧めします。本書は、これまでの著作に引き続き、現代世界の世界像と近未来像を解明するとともに「では著者自身はどうするのか、どうしているのか」を解説。 各章にこれでもかとばかりの実例=ファクトをあげつつ、かつ読者に分かりやすいように、絶妙なそのファクトの組み合わせによって独自のロジックを編み上げていくその筆力は、その博識さや知性もさる事ながら、説得力あるその表現にどんどん飲み込ま

私の身近なキリスト教

私の親戚に、某プロテスタントの一派を信じるキリスト教徒がいます。 毎週熱心に教会に通い、クリスマスや感謝祭などのキリスト教の行事はもちろん、お正月などの日本独自の行事でさえも、日々の生活の歳時記も教会活動の一環として完全に生活の一部に組み入れられています。 彼らは私がキリスト教や哲学を勉強しようがしまいがそんなことは関係ないし、信仰にとってはどうでもいいことだろうし、実際その通りだと思います。私も会話の流れでキリスト教の話はしますが、キリスト教を「信仰する」ということは、

21世期の啓蒙 下巻 スティーブン・ピンカー著 書評

下巻に至って啓蒙主義の理念に基づき、世界中の我々自身が普遍的な共通理解として啓蒙主義の理念を持つべきだなと確信させてくれる内容でした。 「暴力の人類史」を「20世紀の啓蒙」とすれば、本書はまさに現代人と近未来人に向けた「21世紀の啓蒙」です。間違いなくお金を出して時間をかけて読むに値する名著だし、全ての人に読んでもらいたい。そんな感動的な読後感でした。 社会の虚構としての近代市民社会の原理とほぼ同じ概念である「啓蒙主義の理念」が世界共通の虚構として、いかにこの世界を進歩さ

21世期の啓蒙 上巻 スティーブン・ピンカー著 書評

前著「暴力の人類史」の続編ともいうべき本書は、啓蒙主義の理念(=理性、科学、ヒューマニズム、進歩)がいかに世界人類を幸福に導いてきたか?をデータを駆使して証明。 ベストセラー「ファクトフルネス」に近い内容ですが、ピンカー氏の「暴力の人類史」の方が早くから科学的データ主義に基づいて現代のありようを証明していたのではないかと思います。幸福に向かう進歩に関しては多様な意見があると思いますが彼の場合は誰もがそうだと思わざるを得ない価値観なので非常に説得力があります。 進歩とは「死