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思想(哲学と宗教)

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価値観の学問そのものといって良い哲学、価値観そのものといってよい宗教を勉強する事で「価値観とは何か?」に迫りたいと思っています。
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2021年1月の記事一覧

「国家(下)」プラトン著 ー民主制が独裁を生むー

<民主制が僭主独裁制を生むという政治思想> 「国家」は、やはり政治思想が中心テーマ。第八巻で論じられています。 最も理想的な政治体制は、本質を見極める力を持つ卓越者=哲人による独裁政治(最善者支配制)。そして民主制は、もう一つの独裁=僭主独裁制を生む土壌になる、と評価は高くありません。プラトンいわく僭主独裁制は「国家の病として最たるもの」。 独裁者が生まれるときはいつも、そういう民衆指導者を根として芽生えてくるのであって、ほかのところからではないのだ 「そういう民衆指導

「プラトン入門」竹田青嗣著 イデア論について

今回は、イデア論についてです。イデア論はわかりにくいのですが、以下整理してみました。 ■著者によるイデアの定義 イデアとは「本質」のこと。「言葉の本質」を事例にフッサールを引用し ある言葉の本質とは、その概念を定義するような何らかの「実体的」な意味内容ではなくて、むしろ、その言葉によって人々が世界を呼び分けて秩序を作り出している、その仕方だと考えるのがいい(157頁)。 そして、 プラトンが「善のイデア」という概念で差し当たり示しているのは「何が事物の根本原因か」とい

「プラトン入門」竹田青嗣著 ープラトニズムー

<概要> 著者の考えるプラトン思想の本質を、アリストテレス、カント、ヘーゲル、ニーチェ、ハイデガーから現代思想に至る、あらゆる哲学を引用しつつ著者独自の解釈を展開した著作。 <コメント> だいぶ前に読んでいたのですが、プラトン主要著作の通読に至り、改めて著者竹田青嗣によるプラトン解説読みましたが、やはり、その理解の「深さ」と時代をクロスオーバーしつつ引用される哲学者や古今東西の作家(ドストエフスキーなど)の引用と解釈に基づく理解の「広さ」は、驚嘆せざるを得ません。 「単純

「プラトン 理想国の現在」納富信留著 書評

<概要> プラトン著「国家(ポリティア)」というタイトルは正確には「理想国」の意だとし、プラトンの唱える理想国家論が歴史上、内外でどのように受容されてきたのか、そしてその本意は何か、現代に生きる我々にとって、どのように受容すれば良いのか解説・紹介した著作。 <コメント> プラトン専門家の著者、納富信留さんの翻訳したプラトン著作を数冊読んでいたのに加えて、納富さんが1965年生まれで私と同世代なので感性的にも近いのではないかと思い、今回3,080円出して購入して読んでみました

「国家(下)」プラトン著 ー芸術編ー

<芸術について> 第10巻にて「詩人追放論」という位置付けのもと、芸術に対する哲学の優位性が、これでもかとばかりに語られていますが、翻訳者の藤沢命夫氏は、プラトンは芸術を第7巻の「線分の比喩(※)」の「直接的知覚」として位置づけられているのでは、と本書で解説しています。 ※【線分の比喩】 イデアに至る認識のフローを「太陽」を材料に「線」で表現した喩え。 太陽(イデアのこと)に至る認識のフローは、 ①知覚によって(可視界) ⅰ)影をみることからスタートし(間接的知覚) ⅱ)影

「国家(下)」プラトン著 ー善のイデア編ー

<概要> (ポピュリズムが僭主独裁を生むみたいな)現代にも通用する政治思想のエッセンスに加え、価値の原理のルーツともいえる「善のイデア」や「芸術」「教育」に関して解説した壮大なる古典。これが2400年前に書かれたというのですから驚愕するしかない名著。 <コメント> 学習院大学で哲学を専攻していた作家の塩野七生さんが「哲学は古代ギリシア哲学を勉強すればそれで十分」と言っていましたが、本書を読むとその意味がよくわかります。 やっぱり解説書・入門書も大切ですが、原典にもちゃんと