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思想(哲学と宗教)

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価値観の学問そのものといって良い哲学、価値観そのものといってよい宗教を勉強する事で「価値観とは何か?」に迫りたいと思っています。
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2019年9月の記事一覧

ホモ・サピエンス全史と脳科学

ホモ・サピエンス全史(ノヴァル・ユア・ハラリ著)における最も重要な概念は「認知革命」によって形成された「虚構」ではないかと思う。 「認知革命とは7万年前から3万年前にかけてみられた新しい思考と意思疎通の方法のこと。遺伝子に突然変異が起こり、サピエンスの脳内の配線が変わり、それまでにない形で考えたり全く新しい種類の言語を使って意思疎通をしたりすることが可能になる(ホモ・サピエンス全史、第2章)」 「認知革命によって高度な言語を発明し、虚構すなわち架空の事物について語る能力こ

欲望論 第2巻「価値」の原理論 竹田青嗣著

第1巻含む「欲望論」は私のとってのメートル原器です。 今のところこれ以上納得できる論理に出会ったことはありません。今後はすべて欲望論の考えをベースに物事を考えていきたいと思います。したがって第1巻、第2巻とも大著ですが、今後も何か考えに迷った時に必ず読み返すことになると思います。 第2巻も550ページに及ぶ大作。著者の展開する現象学の手法に基づいて真善美の価値観について論じたのが第2巻の内容。先人の知恵も拝借しながら、著者独自の論を展開。「価値観はどのように形成されるのか

本質がわかる哲学的思考 平原卓著

今哲学を学ぶとはどのような意義があるのか?「なるほど確かに哲学は必要だ」というのが素直な読後の感想になるのではと思います。 竹田先生の哲学(現象学)がベースになっているので、竹田現象学を学んだ人間にとっては納得できる内容が多い。 むしろ、平原氏の方がより現代的に明確に解説できてる印象。 例えばカントの解説に 感性:データ収集能力、悟性:データ統合能力、理性:「全体」を推論する能力 と今風に説明している点などは非常にわかりやすい。 私たち人間の世界は、事実の世界ではなく

表現の不自由展を哲学的に考えてみた

「表現の不自由展」は、何がダメで何がいいのか?という根本的な価値観を問う問題で、哲学的にも重要な問題だなと思い、私なりにいろいろ考えてみた。 「審級的価値の本質は人間の集合社会が作り上げた約定的秩序であるという点(欲望論第2巻71節)」。 この考えを適用すれば、日本という集合社会において作り上げた法律、規範とか習慣(=約定的秩序)から逸脱したものが「わるい」ということなんで、法律面はもちろん、法律以外でも日本社会のコンセンサスとして明らかに否定されている価値観に基