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医療ツーリズムとインバウンド

 「医療サービスを受けることを目的として国外へ行くこと」を、医療ツーリズム(メディカル・ツーリズム)と呼びます。
 自国の医療機関を利用せず、わざわざ国外まで赴くのは、どのような理由からでしょうか。また、医療ツーリズムは利用者や受け入れ国にはどのような利点があるのでしょうか。
 今回は、医療ツーリズムインバウンドについてまとめていきます。

観光事業への恩恵

 医療ツーリズムは、国によって医療体制が異なる事により起こります。
 例えば、A国では出来ない治療法がB国で出来る、C国では30万円の治療がD国では10万円で受ける事が出来る等、国によって出来る治療も質も料金も期間も異なります。
 そのため、自国よりも海外で医療サービスを受けたいと考える人が、医療目的で他国を訪れるのです。

 医療ツーリズムを受け入れる側の国にとってのメリットのひとつとして、副次的に観光事業への恩恵があるという利点があります。医療サービスを受け、それ以外の日程は観光に充てる、という利用者は多くいます。
 医療ツーリズムの目的は大きく3つに分けられ、「医療」と「観光」の比重がそれぞれ異なります。

「治療」

 病気や怪我の治療が主体のため、医療への比重が大きくなる傾向があります。観光の要素を含まない、もしくは観光の比重が非常に小さくなります。
 具体的には、がん治療や心臓病治療、臓器移植などの高度な医療が挙げられます。

「健診」

 治療主体に比べると、観光要素も多くなります。しかし、検査を受けてすぐに帰国し、結果を国際便やメールで受け取る等の手法もあるため、観光要素を含まない利用者もいるようです。
 具体的には、健康診断(人間ドック)やPET検査等が挙げられます。

「美容・健康増進」

 治療、健診に比べて、観光の比重が大きくなる傾向にあるようです。
 具体的には、美容エステや森林療法、海洋療法等が挙げられます。また、日帰りの整形(いわゆるプチ整形)手術等もあります。

 もちろん、上記の3つだけではありませんが、医療ツーリズムの利用目的によって観光事業への恩恵が異なることがわかります。

 また、インバウンドに限らず、別の利点もあります。
 医療ツーリズムを行っている病院は、当然外国人向けの対応が充実しているため、現地に移住してきた外国人や、観光で訪れた外国人にとっては非常に魅力的です。
 医療ツーリズムを発展させる事は、インバウンドだけでは無く、地域の活性化の助力となると考えられます。


アジアの医療ツーリズム

 アジアの医療ツーリズムについて、日本以外の例をいくつか紹介します。

シンガポール

 1980年代から医療サービスの改革を始めたシンガポールは、1993年には1万4,000人の患者を海外から誘致しました。その後、2000年には15万人の誘致に成功し、医療ツーリズムによって約215億円(2000年当時、1シンガポールドル=約62.5円換算)の利益を得ています。
 現在では、世界でも有数の医療先進国となり、世界ヘルスケア指数ランキング(2016年発表)では世界第2位となっていました。

タイ

 タイ政府は2004年にタイをアジアの医療拠点として開発する取り組みを始めました。民間病院の高水準医療の提供と、魅力的な観光資源を併せ発展させようという取り組みです。
 タイでは、欧米やシンガポール等の他国よりも安価に治療が受けられるということもあり、近隣諸国の富裕層等を多く受け入れています。2001年には60万人だった受け入れ人数は、2012年には253万人まで増加しました。2018年時点の試算では、2021年には300万人に達する見込みでした。
 JCI GoldMedalに認定※されている病院数は、世界第4位です。

※JCI(Joint Commission International):第三者の視点で医療施設を評価する国際非営利団体。患者の安全性や医療サービスの品質、サービスの改善活動等を厳しく評価される。
アジアの認定施設数は以下の通り
タイ:61施設、中国:54施設、インド:36施設、日本:31施設、インドネシア:28施設、マレーシア17施設、韓国9施設、台湾8施設、シンガポール:5施設(2021年7月時点)

https://www.jointcommissioninternational.org/

 医療ツーリズムは、医療分野への貢献はもちろんですが、それ以外の観光事業や物流等への恩恵も多くあります。そのため、各国政府の主導で活性化させる動きが見られています。

日本の医療ツーリズム

 それでは、日本の医療ツーリズムはどうでしょうか。

 日本は、長い間医療ツーリズムに注力できていませんでした。
 2007年にインバウンド政策の転換として「観光立国推進基本法」が施行され、2008年に観光庁が設置され、インバウンド政策推進が本格化しました。
 この流れの中で、2009年頃から日本の医療ツーリズムに対する取り組みも強化されていきました。

日本のインバウンド / 医療ツーリズムへの取り組み年表
弊社作成

 日本の医療ツーリズムは、近年伸びを見せてはいたものの、まだまだ定着しているとは言い難いのが現状です。
 しかし、日本の優れた医療技術は、アジア、そして世界に認知されています。そして、日本の医療サービスを利用したいと考えている人が多くいる事も事実です。

 現在はコロナ禍によって自由な入出国が出来ない状況にあります。そのため、医療ツーリズムは完全に停滞していると言っていいでしょう。
 しかし、段階的だとしても、いずれは必ず開港し、交流は再開します。日本の医療ツーリズムは、その時爆発的に成長すると弊社は考えております。

 弊社では、中国人向けに医療ツーリズムの提供と、併せてPay事業(WeChat Pay)の普及活動を行うため、活動しております。
 先に述べました通り、国交はやがて正常化し、日本の医療ツーリズムは大きく伸びをみせるでしょう。
 交流再開後すぐにでも活性化すると考えられる医療ツーリズム・医療インバウンド。少しでも興味が御座いましたら、是非一度HPよりお問合せください。

ライター
株式会社 GTL KYUSHU
営業部 広報担当 河野

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