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【雑記】やっと春っぽくなってきたのでただぼんやりと酒を飲む

桜が咲いたとか散ったとか散々見たり聞いたりした後でようやく北の端っこのこの辺りにも桜の気配がやってくる。まだ、気配だけだけれど。皆もう花見も終わったんだろ春のうきうき気分ももう終わりかけなんだろ。こっちは今になってそんな春の気分がやたらと強めの風と共にやって来ようとしている。

気分としては金曜日の仕事終わりの時間帯と似ているような、明日からの週末が楽しみでうきうきするような、家に帰ってビールをグラスに注いでいる情景を思い浮かべているような気分。やっぱりビールは瓶でテーブルの上で水滴を適度に纏っていて欲しいなどと夢想している気分。
 

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いつか君と行った映画がまた来る。じゃなくて続編だった。「トップガン」の続編が35年振りに同じトム・クルーズ主演で制作されもうすぐ公開される。昔飛行機ヲタク少年だった僕にはヨダレものの飛行機映画であるところの「トップガンマーヴェリック」である。そして前のやつは美佐子と一緒に観たっけな……などと思い出す。自分が書く短編小説には「美佐子」が良く出てくるけれどその実写版、実物、いや、本人……である。困ったことに映画とセットでその周辺のことが思い出される。

中央線で帰る美佐子と京王線の僕は新宿で映画観て遊んで別々の電車に乗って帰った。散々留年しまくった後やっとこさ就職できた落ちこぼれの僕と天然系しっかり者の美佐子は傍から見たら小説にでもしておかないと勿体ない程の面白コンビだった。丁度バブル景気に沸いていた時代だった。ようやく定職に就いて対等になったような気分で浮かれていたっけ。

どうしてあの日は一緒に帰らなかったんだろうなんてぼんやり物思いにふけってビールから糖質OFFのストロングゼロ9%オンザロックに切り替える。

意識はさらにぼんやりと35年前の新宿駅を漂いはじめる。気の利いた会話なんてものができない僕は中央線のホームでぼんやり美佐子を見送っていた。


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それでも 一緒に また笑えるかな?
君と初めて恋を語った あの日のはしゃぐ声で 唄っている

作詞:Keyco
作曲:堀込高樹

 
何か書こうとすると今でも彼女の笑顔が浮かぶ。もう、いいかげんにしなきゃな。全部書いてしまったら次に進めるだろうか。
 
走り出した電車の中で美佐子は周りを気にしてなのか恥ずかしそうに小さく手を振った。 
 
 
 

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