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【ショートショート】『アナログ巌流島』

古き良き時代のアナロググッズを発掘して対戦形式でお披露目する。題して『アナログ巌流島』。

今週の対決は、「カセットテープ」VS「レコードプレーヤー」だ。これは楽しみ。

個人的には、ずっとお世話になっていたカセットテープに小さくてかわいい見た目と安くて手頃だった親近感で肩入れするような気持になっていた。

まずは、それぞれの得意技を披露する。カセットテープの得意技は自動でA、B面が切り替わるオートリバースだ。カセット、レコードともにA、Bの両面があってレコードプレーヤーはいちいち手でレコードをひっくり返さなければならないので手間がかかるのだ。

ここでレコードプレーヤーが観客に向かってせせら笑う。こんな嫌味なやつとは思わなかった。
「オートリバースのカセットプレーヤー? お前ら貧乏人が持っている安物のカセットにはそんな便利な機能など付いていなかっただろうに」

そしてダメ押しの一言。
「このレコードプレーヤー様がいなければ、カセットに録音だってできなかっただろう?」

その通りだった。悔し紛れにカセットはレコードの盤面に爪を立てて再生不能にする。カセットがキレるのを初めて見た自分は少し引いた。応戦したレコードプレーヤーはカセットに収まっている磁気テープを引っ張り出してリボン結びにする。

「こんな、裏表あるやつとは思わなかったぜ」

お互い様だった。

 
  
(570文字)

* * *


以上、こちらからお題をいただきました。

難題につき字数オーバー失礼いたします。
 
 

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