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半導体工場の周辺地域のガン罹患率は高い

『新新聞』によると、台湾の半導体工場の周辺地域のガン患者数は、全台湾平均よりも遥かに高いという。

例えば、台南市の南部サイエンスパーク周辺の新市区、安定区、善化区、永康区の4区において、2001年から2017年までの男女のすべてのガンの発生率は全台湾平均よりも明らかに高く、今も増加傾向にある。

また、新竹サイエンスパーク周辺の新竹県宝山郷、竹東鎮、新竹県東区において、2001年から2015年までのすい臓ガンと女性の乳ガンの発症率が全台湾平均より高い。

中科后里七星サイエンスパークの周辺の后里の住民の肝ガンの発症率も全台湾平均より著しく上回っている。ただし、后里の住民に関してはもともとB 型、C 型肝炎の罹患率が高いため、そのことも要因として考えられるが、半導体工場の煙道と排水から、発ガン性の高い六価クロム、ベンゼン、ヒ素、1, 2-ジクロロプロパン、ダイオキシンなど5種の化学物質が検出されており、これらは肺ガン、肝ガン軟部組織肉腫、胃ガンを誘発する。そのため、無関係だと断定することはできない。

ガンの要因は複雑であり、原因物質も最終的には人体から代謝されてしまうため、一概に原因を特定することは難しい。しかしながら、いずれにしても半導体工場で使用される化学物質には発ガン性があることは確かであり、半導体工場周辺で環境汚染指標性のガン(肺ガン、肝ガンなど)のみならず、全てのガンの発症率が明らかに高いことは事実である。

そして、南部サイエンスパーク、新竹サイエンスパーク、中科后里七星サイエンスパークの全てにTSMCの工場があることも事実であり、関連がないとはいえないだろう。

新竹サイエンスパーク地区

さらに、工場拡張予定であった南部サイエンスパークは、約48.2haの事業用地の拡張計画であるが、開発機構の健康リスク評価によると、拡張に伴って排出される1年間の発ガン性物質と非発ガン性物質の排出量の上位5種は下記の通りである。

■ 発ガン性物質               
1位 ジクロロメタン    2.053トン
2位 テトラヒドロフラン  0.448トン
3位 1.4-ジオキサン     0.139トン
4位 テトラクロロエチレン 0.089トン
5位 スチレン       0.051トン   

■ 非発ガン性物質
1位 塩酸         16トン
2位 アセトン       9.208トン
3位 アンモニア      9トン
4位 イソプロパノール   8.444トン
5位 フッ化水素酸     7トン

TSMCの一般廃棄物量と有害廃棄物量の推移

驚くべきことに、排出される危険物質の排出量はトン単位と、膨大なのである。

この評価に組み込まれる発ガン物質は、国際ガン研究機関が2B以上に分類している、人に対して発ガン性がある物質である。そして、上位5種の発がん性物質のうち3種が2Aに分類される、人に対して恐らく発ガン性がある物質なのである。

つまり、半導体の製造工場では、CMR物質の中でも発ガン性の高い化学物質をトン単位と、大量に使用するということである。

熊本のTSMC工場(JASM)は約21.3ha、第二工場も同規模以上の工場が計画されているため、一概に単純算出することは不可能であるものの、排出量もやはり年間トン単位であることは予想できる。そして開発計画がさらに拡大されれば、排出量も大幅に増えていくことになる。

問題となるのは、周辺地域の住民がこれらの発ガン性物質に長期的に、そして慢性的に暴露されることである。たとえ1〜2年では目に見える影響は無くても、時間経過とともにガン罹患のリスクは確実に高まる。


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